ACT.1 山田部とかいうよくわからない組織

1/35
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/86ページ

ACT.1 山田部とかいうよくわからない組織

 誰もが新しい生活の期待に胸を膨らませる四月。ひとりの少年が、桜の花びらが舞い込む東西学園の渡り廊下を歩いていた。 (どうせだったらモテる部活に入りたい。ノリの良い友達を四五人引き連れて、放課後は他校の女子と合コン三昧。この先にはバラ色の高校生活が待っている……)  そう信じて疑わない、外見にこれといって特徴のない黒髪の少年である。彼は、先刻のオリエンテーションで配られたばかりの入部届けに、早速「テニス部」と書き入れて、職員室へと向かっている最中だ。 ――思い返せば。  少年は中学時代の毎日に思いを馳せる。  (俺は本当に地味だった……!)  彼は中学生の頃、卓球部に所属していた。部員は彼を含めて三人。体育館の一面はバスケ部が占領しているため、隅で卓球台を一台だけ出して、ラリーをしていたものだ。ものの見事にクラスのはぐれ者たちが集まり、盛り上がった思い出など皆無である。     
/86ページ

最初のコメントを投稿しよう!