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「おい、大丈夫か、太郎」
「大丈夫なわけあるかー! なんでいきなり挨拶した瞬間に武技をかけられなければならないんだ!?」
「ああ、こいつは合気道の有段者だからな。最初に技をかけて相手の力量を推し量るんだ」
「なんですかその世紀末設定!?」
男子生徒は太郎の抗議をまるで意に介さず、呵々と笑う。そして彼は面白そうに少女を振り返った。
「おい、お前もちゃんと自己紹介しろ」
少女は長い足をパイプ椅子で組み、腕を組んで太郎から目を逸らして言う。
「二年四組、山田アリス」
太郎はなんとか起き上がり、「アリス…?」と返した。
金髪碧眼の美少女、山田アリスは不機嫌そうに鼻を鳴らして言う。
「母親は日本人だけど、父親はイギリス人。何か問題でも?」
武術の有段者というからには、その道の精神的な心得もあるのだろう。どことなく凄みのある目つきで睨まれ、太郎は「あ、アリマセン…」と素直に頷いてしまった。
そんな不穏なやり取りを事とせず、この真昼の太陽のような男子生徒は太郎に声をかける。
「太郎、まあ適当に座れ」
「あ、はぁ……」
太郎は言われるがままに、机から降りて手近なパイプ椅子に腰を降ろした。
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