ACT.1 山田部とかいうよくわからない組織

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 どうにも、この男のペースにハマっている気がしてならない。さっきから太郎は、この男の魔の手から逃れるタイミングを伺っているのだが、その一瞬の隙がどこにも見当たらないのである。  長身の男子生徒は、ホワイトボードの前に立ち、アリスと太郎を見回してゴホンと厳かに一つ咳をする。まるで、これからアーサー王の円卓の会議のような、重要な議論が始まるとでもいうように。 「と、いうわけでだ。人数も揃ったし、始めようか」  いきなりこう切りだされても、太郎は、 「始めるって、何をですか!」 としか言い様がない。  男子生徒は判然と言い切った。 「山田部だ」  太郎につきまとってから、この男がずっと主張している、このキーワード。  さすがにこのタイミングならば、太郎も反論することができた。 「だから山田部って、なんなんですか!? っていうか、そもそもあんた誰なんだよ!」 「俺は三年の、山田部の部長だ。部長と呼べ」 「だから山田部ってなんなんだって聞いてんだろうが!!」 部長は、「ああ、そういえば」とポンと手を叩く。 「説明がまだだったな」 「今更か!」 という太郎のツッコミを無視し、部長は続ける。 「お前、この名字、不思議だと思わないか」 「え?」 ――唐突に、この人は何を言い出すんだ。  太郎の胸を、さらなる疑念が満たす。しかし、同時に「苗字」というくくりに、納得がいった。     
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