ACT.1 山田部とかいうよくわからない組織

13/35
前へ
/86ページ
次へ
 この人の名前は山田。そしてさっきの暴力美少女も山田。今更言うまでもなく、自分の苗字もまた、山田だ。 「世の中には、多人数の名字なんぞ、ごまんといる。鈴木さん、佐藤さん、高橋さん……だが彼らはありきたりな苗字であることを馬鹿にされることなく、市民権を得ている。ところがだ! 山田という名字はどうだ? 山田? カッコワライ、みたいな、そんなノリを受けるだろう! 思うに! 山、そして田という、田舎を想像させるフレーズが合わさっているために、芋臭い! ダサい! そんなイメージを押し付けられているのだ!」  部長はパンパンとホワイトボードを叩きながら、アドルフ・ヒトラーよろしく大演説を始めた。太郎はその勢いに押され、「は、はぁ」と曖昧に相槌を打つことしかできない。 「いいか! 俺はな、そんな山田という名字のレッテルを、引っぺがす! ベリっとな! これは革命である!」  部長はドオン! と喪黒福造のように人差し指を太郎に突きつける。  太郎はこの男の勢いに気圧されながら、ちらり、とアリスを見た。彼女は聞いているんだか聞いていないのか……と思ったが、見事に鼻ちょうちんをふくらませて寝入っていた。 (全然聞いてねえよこの人! 部員じゃないのかよ!?)     
/86ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加