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ここで謝って、さっさと自分がテニス部に入りたい、という旨を伝えよう。
そう、太郎は思っていたのだが。
彼の期待は見事に裏切られた。
「ああ? お前、一年か?」
金髪の少年は、真新しい太郎のブレザーの襟元に留められた学年バッジに目をやった。そこには校章と「壱」の文字が模られた彫り物がしてある。
太郎は「ええ、はい」と答えた。
すると金髪少年は、「ふーん?」と太郎を上から下まで舐め回すように見た。そして口を開く。
「なるほど。そうだ、お前、テニス部に入れよ」
――ええっ!?
突然の申し出に太郎は目を見開いた。
山田部に続いてテニス部の勧誘とは……。どこの部活もこの季節は新入部員の獲得に躍起になっているらしい。
「お、それ、いいじゃん」
と坊主頭が言う。
「だろ? 今年の新入部員のノルマ、まだ全然なんだよなぁ。俺、テニス部主将の小松岡。ちょうどいいわ、お前入れ」
「そうそう。これも運命よ、運命。俺、副将の錦巻ね」
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