ACT.1 山田部とかいうよくわからない組織

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 まあ、高橋がラケットを振った瞬間、手から引っこ抜けて吉澤のみぞおちにぶち当たり、吉澤が昼飯のゆで卵をそのままゲロったときは「口から産卵してるギャハハハ!」と大爆笑したものだったが、そのあとバスケ部の女子たちに卒業まで「キモイ」「近寄るな根暗卓球部」と言われ続けたので、プラスマイナスゼロどころか限りなくマイナスな思い出としてカウントされている。  少年は何度も卓球部を辞めようと思った。しかし、できなかった。入部してから数ヶ月が経過したその時分、もう各部でのメンバーは固まっており、そこに今更自分の居場所など作りようがなかった。  そんな彼が、日が暮れて体育館を後にし、坂を下っていたとき、何度も目にしていた光景がある。 「サーブ行ってみよー!」 「行っくぞぉ!!」  それはテニス部が繰り広げる、傍目から見てもなんとも楽しそうな部活動だった。スタイリッシュなスポーツウェアに身を包んだ男女が、コートでラケットを振り、観客席でも興奮しきった応援の声があがる。我が卓球部など、応援要員どころか女子部員すらいないというのに……。  つまり、テニス部というのは、ラケットが大きくなっただけで、部活の規模まででかい。部員には可愛い女の子とイケメンしかいない。たとえそれが雰囲気だけで、よくよく見ればブスとブサイクだったとしても、和気あいあいと男女混合グループを形成していることには変わりはない。まさに部内はリア充の巣窟。 朱に交われば赤くなる、ということわざがある。 (つまり僕だってリア充と友達になれれば自分もリア充になれるんだ!)     
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