ACT.1 山田部とかいうよくわからない組織

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 それを聞いた山田部長は、はんっと鼻で笑う。 「何戯言を。太郎はな、テニス部なんぞに入る理由はないんだ。貴様らとはレベルが違いすぎる。お前ら素人遊びの部に入ったところで鶏群の一鶴。何も学ぶことなどない」  太郎の顔面が蒼白になる。この状況で、なんで挑発するようなことを言うんだこの人は!  あわあわと顔を青くする太郎の横で、 「んだとぉ……」  錦巻がイラッとしたように、山田部長を睨みつけた。  その横で「面白えじゃん」と小松岡が言う。 「そんなに言うなら、証明してもらおうじゃねえか。明日、俺達と試合しようぜ。ふたりまとめて、ダブルスで勝負だ。もし俺らに勝ったら、うちの部に来る理由はねえって認めてやる。だが、もしお前らが負けたら」 小松岡は獲物に狙いを定めるハイエナの顔で、舌なめずりして、言い放った。 「みっちり、うちの部で鍛えてやるから覚悟しとけ」 それだけ言うと、二人組は去っていった。 取り残された太郎と山田部長。外はすっかり夕暮れ時になっており、カラスが間抜けに「カーカー」と鳴いている。  満足気に腕を組んでいる部長の横で、太郎はおずおずと口を開いた。 「先輩、その……」 「なんだ、礼ならいらんぞ」  と得意顔の山田部長に、太郎は反射的に怒気を荒らげた。     
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