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錦巻副将が指差す先には、手を振りながら駆け寄ってくる山田部長。
が、その部長の格好が……。
「悪い、待たせたな」
と晴れやかに山田部長は笑う。まるでスポーツ雑誌の表紙にでも使いたくなるようなグッドスマイルだったが、太郎はかねてよりの疑問を口にした。
「いえ……それより、その……なんで制服なんですか?」
山田部長は昨日のように、第一ボタンまできっちりと締めてブレザーの制服を着込んでいた。ここテニスコートでそんな格好をしている人間は一人としておらず、明らかにこの男は浮いている。
「おかしいか?」
とブレザーをつまむ山田。
「おかしいですよ! なんでジャージじゃないんですか!?」
「ジャージなぁ。俺も一瞬そう思ってジャージ探したんだが、一向に見つからなくてな。そういえば、前に隣の奴がウンコ漏らした時に貸してやってそのままだったと思いだした。アッハッハッハッハ」
なんも面白くねえよ!
と太郎は前頭葉あたりで突っ込んだ。
「あれ、なんか空気おかしくないか?」
と山田部長。
「原因はあんただよ!」
と太郎が思わず大声を出したところで、小松岡主将が、ドン引きしながら口を開く。
「まあ、制服でもいいけどよ……。さっさとやることやろうぜ」
小松岡主将と山田部長が向かい合う。
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