ACT.1 山田部とかいうよくわからない組織

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ボールが太郎たちのコートに着地し、バウンドする。ブレザーにまとわれた山田部長の腕が、逃すまいと大きく振りかぶられる。だがボールは、軌道を逸れて、あらぬ方向へ飛んでいった。あまりに不条理な展開に、太郎は思わず叫んだ。 「ちょ、今ボールがありえない動きしたんですけど!?」 「見たか! 俺様の軌道フォロー異次元サーブを!」  小松岡主将が得意げに叫ぶ。 「山田先輩、今明らかに重力に逆らってましたよね」 「ああ、あなどれんな」 「あなどれないっていうか、もう予想外なんですけど」  と、太郎と山田部長が悔しげにテニス部チームを見る中、しわがれた声がコート内に轟いた。 「フィフティーン・ラブ!」  いつの間にいたのか、審判らしき中年男性が高らかに叫んだ。 「誰だ、あのオッサン!?」  と瞠目する太郎。 コートの審判席には、ポロシャツにスラックスを着て、サングラスをかけた五十代後半くらいの男性が立っている。 「あのオッサン誰っすか!? いつの間にいたんだ!?」 「どこかで見たことあるぞ」  山田部長は、じっとオジサンを見つめる。 「え、先輩、知ってるんすか?」 「よく気がついたな」  と錦巻副将。その表情は今にも自慢したいのをこらえているような顔だ。  あの人、そんなに有名人なのか……。 「あの人はな、坂をくだったところにある駄菓子屋のオヤジだよ!」 「全然ドヤ顔で言うことじゃない!」     
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