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どこぞのウインブルドンの優勝者かとおもいきや、テニスとは縁もゆかりもないただのオッサンだった。
山田部長も一抹の不安を憶えたのか、
「あんな素人に審判を任せて大丈夫なのか?」
とオッサンを凝視する。小松岡は即答した。
「問題ない。あのオッサンは松岡修造の大ファンだからなぁ!」
「なら大丈夫だな」
「どこがですか!」
あっさり納得する山田部長に、太郎は、こいつら本当に大丈夫か!? っていうか、こんな奴ばっか集まってるこの高校が大丈夫なのか!? と心のなかで突っ込みの嵐を繰り広げる。そんななか、小松岡からサーブ権を交代された錦織がコートでボールを構えた。
「ハァァァ…………」
まるでどこぞのスーパー戦士のように、珠を片手に気合を溜める錦織。
「あの……なんか、あれテニスをするポーズに見えないんですけど……」
太郎が口の端を引き攣らせながら言う。そんなことをしている間にも、小松岡の謎の波動は着実にラケットを握る両手に集まっており、風圧まで巻き起こってきた。
「な、なんだあれは……!」
山田部長が目に砂が入らないように、手をひさし代わりにして叫ぶ。
ついに錦織は、ボールを宙に踊らせ、ラケットを振り上げた。
「天地開闢の極みーーー!」
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