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ボールがすさまじい回転風を巻き起こしながら太郎たちのコートに特急してくる。
「うあああーー!?」
太郎は無様な声を上げて真横に吹っ飛び尻もちをついた。その横で、呆然と立ち尽くす山田部長の顔ギリギリのラインを、豪速球が駆け抜けていった。ボールは山田部長の背後にズガン!と地面に突き刺さる。すかさず審判員が
「サーティー・ラヴ!」
と叫んだ。
地面にしたたかに腰をうった太郎は、がばっと立ち上がり、錦織らに向かって叫んだ。
「いっ、今の何ですか!? 今の反則じゃないのか!? っていうか何だその技のコール! 必要あんのか!」
錦織は両腕を組み、せせら笑う。
「今のは“天地開闢の極み”という俺様が編み出した、独自のサーブ技法だ。全身の気を両の手のひらに集め、サーブを放つラケットに相乗させる」
「錦織のサーブから逃れる術はない」
ニヤリと小松岡が笑う。
「なんだよそれ! 気ってなんだよ! もはやテニスじゃねえだろ!」
と太郎。しかし錦織は一笑に付して、部長のほうを見やった。
「おーい、山田~。昨日は散々、俺達にエッラそうに啖呵切ってくれたよなぁ。なのに、なんだ、この状況は。もう俺達次の一点でマッチポイントなんですけどー」
「訂正するなら、今のうちだぜ?」
小松岡は残忍な笑みを浮かべる。
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