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ということに太郎は気づいたのである。
せめて名前だけでも格好のつくものであったなら、と妄想したのは一度や二度ではない。
たとえば自分の名前が、光と書いて「ライト」と読んだり、「何かひとつのモノを護るために」という由来で「一護」とかいう名前だったなら、まだ自分に誇りを持てたんじゃないだろうか。いや、そもそも、この「山田」なんていう苗字ではなく、「龍ヶ崎」とか「秋篠宮」とか、字面だけで厳つい屋号を冠していたのなら、まだ個性的な人間として周囲に扱われていたのではないだろか。
(……なんてね)
太郎はそんな稚拙な空想を、すぐに打ち消す。改名するのは、長年かけて別の名前を使用していたという実績が必要だったり、わざわざ裁判所にまで行かなくてはいけなかったりするらしい。そこまでして、自分の名前を変える必要性は、どこにもない。
特にこの名前でイジメられたり、周囲から酷い扱いを受けたりしたわけではない。まあ、その分、印象の薄い人間として接せられ続けてきたわけだが……。
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