ACT.1 山田部とかいうよくわからない組織

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「行かねえよ! 離せよこの野郎!!」  太郎はありったけの怨嗟をまき散らし、戒めから逃れようともがく。だが、太郎とこの男子生徒との腕力には雲泥の差があり、とうてい振りほどけるものではなかった。なすすべもなく太郎は、上履き用のサックスブルーのスリッパを廊下にすべらせながら廊下を横断していく。  悪態をつく太郎と、彼の矮躯を引きずる男子生徒。そして太郎が廊下を引きずられること、数分。 「ここだ」  やおら男子生徒は立ち止まった。太郎が連れて来られたのは、一階最東の階段下の、物置スペースだった。  廊下と室内を隔てるのは、すりガラスの嵌った、くすんだ水色のドア。すりガラスには、コピー用紙がセロテープで止められている。そこにはマジックで乱雑に「山田部」と書かれていた。 「やまだ、ぶ……」  ぼんやりと、その言葉を口に出す太郎に、男子生徒は深く頷いた。そしてドアノブを回して薄汚いドアを開け、太郎を乱暴に中に押し込む。 「イテぇ! 何するんすか、いきなり!」 「まあ、そいつにひとまず挨拶しろ」 「……は?」  そいつって、誰だ? 疑問符を浮かべながら、太郎は室内を見回す。決して広くはない部屋だ。いや、むしろ狭い。     
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