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この掛け声で居住まいを正さない生徒を、獅童は知らない。彼の脳裏には、先日自分をノックアウトして入部届を出していった山田部の面々が、この声でスライディング土下座までかます場面まで想像できた。
ところが。
「っしゃああ!! これで我が山田チームが全国首位に大手だ!」
「何言ってるんですが部長! まだあと3万5700ギルドも上にいるじゃないですか!」
「太郎があそこでミスしなければ、あと1000位は上だった」
「アリスちゃんだって回復魔法かけてくれなかったじゃないか!」
パイプ椅子に座り、会議用の長机を囲み、スマホゲームに夢中になっている三人の男女。
「……おい」
獅童はこめかみをひくつかせながら、口を開く。だが彼らは一心不乱に指をタップしており、手にしているスマートフォンからは、あいかわらずド派手なエフェクト音が盛大に漏れでている。三人がこちらを振り向く気配は一切ない。獅童はこめかみを引きつらせながら、大口を開けた。
「おい! お前ら、人の話をーー」
「いい加減にし給え、君たち!」
獅童の声を、彼の後ろから室内に足を踏み入れた銀縁メガネの男子生徒があっさりと遮った。
(ええええ~~~!?)
と自分の出番を取られた獅童は口を半開きにするが、誰も彼を気にもとめていない。
「ん?」
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