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Meeting
あーー、終わらない。何もかも終わらない。増える一方。」
出雲は自分のデスクに山積みになった資料とパソコンを見ながら、あーでもない、こーでもないと独り言をブツブツと呟やく。
机の上はまさにカオスといっていいほど散らかっており、あちこちに資料や、謎の部材が乱雑に積み上げられ空間を圧迫していた。
崩れないのが不思議な、その山積みの塊は、現場から帰ってきてないのが一目でわかる状況を醸し出していた。
「あー、報告書は、まとまんねーし。始末書は終わらねーし。もう無理!災害速報きちんと書いたからいいじゃんかよ。もうー。」
「出雲。お前な、アレをきちんと書いたって言うなら、頭を伺うレベルだぞ。」
出雲の大きな独り言に、デスクの真ん中に座る小太りの中年男性は、薄くなった髪の毛に哀愁を漂わせると声を返した。
「なんすか?北浦さん。また、禿げたんですか?大変すね。もう、ハイブリッドにでもなったらどうですか?」
「お前なー!上司に言う言葉か、それが!お前の報告書改めて、見てみろよ!」
出雲は悪びれる素振りも見せずに、北浦から乱暴に投げつけられた資料に目を通した。
『ハイブリッド討伐時にバイブロハンマーを使用した際、周囲の建造物を破壊し、地下道に落下。』
そう記載された見出しに、発生状況だけは細かく記載してあった。
だが、特筆すべきは原因と対策だった。
原因
1、地盤が脆い。
2、敵が思いの外堅い。
3、ロマン砲だから。
4、元請の口が悪い(由里香)イライラする。
5、バイブロは地面に向けて撃てと言いきった、木田さんと北浦(禿げてる)のせい。
対策
1、真横や空に向かって撃つ
ただし、この際、威力は比べ物にならなく減衰するので注意が必要。実際この使い方をした馬鹿を発見したら、俺は切れる自信がある。
2、地面を固くする。
3、ゆとりを持ち、用法用量を守る。
4、バイブロに夢や希望を込めすぎない。
5、北浦を責任辞職させる。
資料を読み終えた出雲は、クルリと北浦を振り向く。
「えっ、なんで?いいじゃん。」
「良くないだろ!!頭おかしいの、お前?それに、何でいちいち俺の名前を出すの?そんなに嫌いなの?」
北浦は椅子から立ち上がると、クリップボードをデスクにバンっと叩きつけた。
若干赤みを増した顔に軽く怒気を混じらせ、声を荒げると、出雲に詰め寄り質問する。
そんな彼に出雲は、なぜか今までとは違う優しい笑みを返した。
「嫌いなわけないでしょ。木田さんと北さんと俺だよ。ね。」
真面目な顔と声色、さらりと口から出た真実味を感じる発言に、北浦は一瞬だが下を俯く。
何か思い起こす事があるのか、北浦が言葉を返すまで、しばらく時間を要した。
「ああ、そうだな。…お前が嫌いになれない、ダメな上司だったな。俺は。」
「ししっ、わかってんじゃん。」
「調子に乗るな。…出雲、また飲みに行くか?」
「またとか言わず、今日行こーよ。」
「はは、わかった。五月雨、予約しとくな。」
「オッケー、北さん。」
会話が終わると、北浦は薄くなった頭を掻きながら出雲の席を離れる。怒っていたにも関わらず、会話終わりに見せた顔は晴れやかで、携帯を取り出すと渋めの声で電話をかけながら、廊下に出ていった。
「さーて、俺も一服すっか。」
話が終わり煙草を吸いに行こうとした出雲だが、椅子から立ちあがろうとする腕を、何者かにガッと掴まれる。
「駄目です。出雲くんは、今日10時から対策会議があるから、一服も現場も、駄目です。」
「出たな。ぱっつん眼鏡。」
「違います。阿須那です。」
華奢なその腕でギリギリと握り込む阿須那は、冗談が通じなそうな雰囲気を醸し出す。
出雲が言うよう黒い前髪をぱっつんと揃えて切り揃えた髪型と、やや大きめのメガネを掛けた真面目そうな印象を受ける美人の女性。
受付事務を担当するに相応しい彼女の容姿だが、その顔に似合わず気が強いのか、握り込んでいた出雲の腕をようやく離すと、乱雑に置かれたデスクの資料をぐいっと横にどけた。
「これ飲んで、頑張ってください。」
出雲の為に淹れてきたのか、阿須那は自分の手に持つ温かいコーヒーを出雲に差し出すと、出雲はそれを受け取る。
「えーーー。せめて一服させてよ。阿須那さーん。」
「駄目です。出雲くんは、一服が長すぎるんです。」
「…本当に1本だけなのにな。…お前、眼鏡が曇るからな。」
「眼鏡は関係ない。あっ、です。」
出雲の必死なお願いは続くも、阿須那には届かない。最終的に阿須那は出雲の煙草をポケットから取り上げると、得意げに眼鏡をクイッと人差し指で持ち上げる。照明の光にキラリと眼鏡を光らせると、勝ち誇ったようにドヤ顔を披露した。
「勝ちです。」
「勝ち負けじゃないよ。阿須那さん。」
「駄目ったら駄目です。会議スケジュールも登録して、社内メールで通達してるのに、資料を作らないからこうなるんです。」
「えー、だって現場クソ忙しいよ。本当は今日も行きたいんだよ。絶対、しわ寄せくるからね。」
「駄目です。今度のG地区大型現場じゃないですか。協力会社さんも多数来られますし、だから駄目です。」
出雲は阿須那に説得され、嫌々ながら自席のパソコンに目を向け始めた。だが、置いてあるマウスをグリグリと回したり、ネットを見始めたり、資料を作る気があるようには到底思えない態度で、なにやら、あーあーと唸っていた。
阿須那は、そんないい加減な態度をとる出雲に若干冷めたい視線をぶつけると、文句と励ましの声を交互にかけ続けていた。
「あー、資料作るのめんどくせぇーなー。10時まで後20分だし、どうせ今回宍道班だぜ。適当でいーよ、もう。」
「駄目です。事前準備、内容通達、注意喚起事項がいかに重要か出雲くんならわかりますよね。言ってしまえば協力会社で働く、人の命を貴方は預かるんです!」
「わあってるよ阿須那さん。宍道は死んでもいーけど。…なあ、それより阿須那さん、ずっと俺の横で監視するつもり?」
「はい。出来上がるまで、ずっと見てます。」
「勘弁しろよー。お前、俺の事好きだろ?今度、特徴的な前髪切ってやるからな。」
「…前髪関係ないもん。あっ、です。」
出雲の一言に恥ずかしくなったのか、阿須那はいつもとは違う可愛らしい口調で言葉を返すと、前髪を指先で何度も触りながら暫く赤面していた。
出雲はというと、阿須那の監視にようやく観念したのか、初めはパソコン前で文句を垂れていたが、次第に無言になると高速で会議資料を作り上げていく。
カタカタとなり続けるキーボードの音と比例するように、デュアルパソコンの画面は必要な書式と参考書類で埋め尽くされると、資料の形が出来上がる。
「早い、です。」
「やる気になればだけどね。」
出雲が言うよう、やると決めたら出雲は恐ろしく速い。
スピードだけでなく、経験則からなのか書き出す言葉や資料も非常にまとを得たものを作成する。
残念な事は阿須那達のお守りがないと、いつもこんな調子でグダグタと時間を浪費しがちになることであり、阿須那のようにその事を知っている仲間達は、出雲が逃げださないよう、やる気を出すよう、あれやこれやといつも対処していた。
「できたよ。阿須那先生。」
「見せてください。」
出雲は出来上がった資料をパソコン画面に映すと、阿須那は出雲にグイッと体を近づけると体を押し退ける。
「近い、近い。良い匂いするし。」
出雲がセクハラめいた言葉を言っても、阿須那は作成された資料を言葉も返さずジッと見つめる。うん、うんと、たまに合槌をうったりするが、基本喋る事はなかった。そして、最後にヨシという声とともに出雲に笑顔を見せる。
「やればできるんです、出雲君は。なのにやらないんです。内容のまとめ方も非常に上手で、この対策部分の絵も混じえた説明も素晴らしいです。凄いです。凄いです。」
阿須那が拍手して褒め称えると、流石に照れたのか出雲は下を向き、クシャクシャっと自分の髪を掻いた後、阿須那の顔を見つめる。
「ありがとな、阿須那さん。」
「ああ、いえ。どういたしましてです。」
出雲の屈託のない笑顔と感謝の言葉に、阿須那は出雲から視線を外すと、眼鏡をクイクイっと何度も上げる動きを繰り返していた。
「今度、度の合った眼鏡買いに行こうな。」
「眼鏡関係ない。…ですからね。」
その後、出雲は阿須那からお墨付きを頂いた資料を必要部数印刷すると、阿須那が何も言わずにその資料を纏めてくれた。
「そろそろ時間です。隣の部屋のモニター起動してきます。」
「よろしくね。」
出雲は阿須那に手を振ると、デスクに顔を埋めた。実は精魂使い果たしたのかはわからないが、阿須那が帰ってくるまで出雲は顔を上げる事は無かった。
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定刻の会議の時間になると、会議の出席者がどんどん集まり、並べられた長机に着席していく。
年齢は様々だが、10人程度の集団は仲間内で、仕事やプライベートな話を出雲を交えて楽しそうに喋っていた。
出雲は全員が時間内に揃ったのを確認すると、一番前の司会席に移動し、軽く頭を下げた後に喋り出す。
「えーと、若干めんどくせーけど、定刻の時間になりましたので、G3地区の対策会議を始めます。今度のプロジェクトを取り仕切る出雲です。よろしくお願いします。」
「知ってる。知ってる。有名人だよ。災害速報笑ったし、馬鹿なんじゃないの出雲君?」
いきなり周囲からヤジが飛ぶが、出雲はその中心人物に、はーと1つ溜息をつくと、鋭く尖った目で睨みつけた。
「どうやら、宍道は死にたいらしいな。よし、次の現場で殺そう。」
出雲から殺害予告を受けた穴道と呼ばれた男は、そのいかついドレッドヘアーを右手でかき上げると、怒られているにも関わらず満面の笑みを出雲に向け言葉を返す。
「殺害予告は駄目っしょ、出雲代理人。作業責任者だよ、俺。…しかも、頼りになるじゃん。」
宍道は煽るような軽口を叩くと、出雲に向けてウインクしながら指を差した。
その態度が気に入らなかったのか、出雲は大きく舌打ちした後に、片目を細め睨みつけるような視線をぶつけると言葉を返す。
「死ねよ!死んでしまえ!シジミになれ!こっちはなー、資料作成したせいで、イライラモードだからな!!」
「ちょっと良くわからないけど。まあ、ははっ、お疲れさんでーす。」
出雲に響くような声で暴言を吐き捨てられた宍道だが、いつもしているやり取りなのか、全く動じず顎を突き出すと出雲に軽く会釈する程度だった。
宍道は今度のプロジェクトを担う協力業者の作業責任者であり、チーム自体の直接指揮を行うポジションについている。
いかつい見た目と先程披露した軽口のせいで軽視されがちだが、実は出雲からは、かなり信頼を得ている。見かけとは裏腹に与えられた仕事以上の事ができる事を知っている出雲は、宍道を気に入り良く連れ回していた。
宍道も宍道で出雲の事を少なからず気に入っており、出雲の現場代理人というポジションも熟知している。
全ての工程や安全などの管理を行い、請負人に代わって行使する権限を授与された結構偉いポジションなのにも関わらず、出雲は絶対に偉ぶらない。そこが好きであり、ある程度お互いを知っているからこそ、こう見えても2人の仲は良好だった。
「馬鹿は放っておいて。えーと、今度のGプロジェクト…の前にめんどくせーけどハイブリッドについて簡単に説明します。わからないことがあったら聞いてね。宍道が答えるから。」
出席者たちは出雲の説明を聞くよう、視線を大型モニターに移すと、頷きながら映る資料と手元の資料を見比べ始めた。
「知ってると思うけど、人が鉄化し暴れ狂う現象が20年前を境に爆発的に広がると、その者達をハイブリッドと呼び、人類は敵と認識します。…可哀想だけど、完全に鉄化すると治せねーからさ。…まあ、いいや。」
「うん、だね。倒すしかないね。悲しいけど、これせん…」
「宍道、名台詞はいらない。怒られる。」
「ごめん。言いたかっただけ。」
「まあ、良いけど…でね。世界的に対策するんだけど、まあ、鉄化する人が多すぎるわ、戦いで街はぐちゃぐちゃになるわ。散々よ。後手よ後手。人口も5割は減ってるからね。」
「怖いねー。夢も希望も無いからね。いや、僕らがそんな事を…」
「うるせーなお前。いちいち喋んな。…続けるね。まあ、色々あるけど最終的に機械壁で防壁を作りその中で人類は暮らしましょうとなって、ハイブリッド隔離地区と、一切の処理を放棄した完全閉鎖地区、後は俺らが住んでいる機械仕掛けの解放地区ができたわけよ。」
モニターには最新の現在状況がわかる地図が映し出されると、出雲はパソコンを動かし、色分けがしてある3つの地区をポインターで指し示すと丁寧かつ、わかりやすく説明していく。
「えーと。後、なんだ?」
「ハイブリッドの種類かな。」
「あーそうだった。ナイス宍道。宍道が言ったようにハイブリッドもクラスが分けられてんのよ。鉄とか、鋼とかは良く聞くでしょ。個体の大きさ、強さで識別するけど。…ぶっちゃけ基準はわかりません。匙加減です。」
「てきとー。」
「本当だからな。わあ、いっぱいくっついてる。鋼で登録しよう、とかだからな。まあその上のクラスもあるけど、…anima、animusとかはもう出ねーだろ。今回の作戦にも関係ないし、割愛するからな。」
出雲は長い説明が終わると、フーと1つ溜息をつく。喋り疲れたのだろうか、阿須那の入れてくれた冷めたコーヒーを、休憩がてらに飲みはじめる。
徐々にではあるが、顔を顰め始めると説明がだんだん良い加減になり始める。ポインターの光を宍道の頭に当てたり、好きなアニメの画像を見せて宣伝したりしていたが、遂に事切れたのか机に片肘をつけた状態で、会議の急な終わりを宣言した。
「面倒くさくなったので、終わります。」
そう呟いた出雲が司会席から頭を深々と下げると、出席者から総ツッコミを入れられる。
「それは、駄目。出雲代理人。さすがに怒られるよ。」
宍道が会議の強制終了を告げた出雲に、手をブンブン横に振り、ダメダメと連呼する。出雲はそれを確認するが、余程嫌なのか愚痴をこぼし始めた。
「だってさー。いっつも同じ説明してるんだよ。いっつもだよ。毎回説明してんだよ。」
「それはそうですけど、基本は肝心だよ、出雲君。」
「そうだけどさー。」
皆の説得を受け、渋々と説明を続けていくことにした出雲だが、ため息の数はどんどん増えていく。チラチラと時計を気にしては、だんだんとイラついていく態度に周りも、かなり気をつかっていた。
「…最後!今回の作戦、重要なのは2点。現調班の報告によると、ハイブリッドの数が多い。ここらへんに集中してるけど、およそ50。」
出雲が映し出された現場写真と地図をマーカーで囲むと、レーダー探知機で捉えた反応地点を説明する。
「50かぁ…、聞いてはいたけど、結構きついっすね。」
内容を聞いた宍道が少し不安げな顔を見せると、資料詳細に目を通す。考える事があるのか、マーカーや、鉛筆を取り出すと、書類に記入し始める。
「まあ、数はどうにかなる!頑張れ、宍道!」
「俺かよ!!」
「お前しかいねーだろ、囮になんのは。頭は草みてーだし。」
「…意味わかんねーす。1人は無理だからね。」
それ以上宍道は言葉を返さず、嫌そうに顔を顰めると、手を振り続けて1人は無理とみんなに合図していた。しかし、出雲は腕を見せてやれっと言う意味なのだろうか、右手の腕をバンバン叩くと拳を突き出し、宍道を煽っていた。
「まあ、いいや。問題はもう一点の方だから。…『なりかけ』が確認されてる!いわゆる、救出がある!」
出雲が一際響く大きな声を出し、最重要に思える注意点を強調して話しだす。
その言葉に皆がガヤガヤ言い始めるが、真面目そうに聞いていた、出雲も顔を知らない若い子が挙手をしていた。
「はい、えーと。初めて、だね。」
「この前入りました。八雲と言います。」
「はい、八雲君。なんでしょうか?」
「すみません。『なりかけ』って、何ですか?」
その言葉に一瞬眉を垂らし口を開ける出雲だったが、目を閉じると息を吐きながら、首をゆっくり横に振った後に、宍道の顔を睨みつけた。
宍道は目を合わさないように、わざとらしく壁に目を逸らすと、わざとらしく唇をかみしめる。
「しんちゃん!きちんと指導して!!」
出雲はそう言い放つと机をバンバンと叩く。
初めはやばいと思ったのか顔を逸らした宍道だが、妙案を思いついたのか出雲の顔を真剣に見つめ直し口を開く。
「今度の現場責任者、出雲君じゃん。」
「それが、どうした?アホ宍道。」
「信用してるし、説明もうまい!貴方は俺より遥かに詳しい。…絶対先入観なく、出雲君の説明聞いた方がいいでしょ。」
「…説明するけど、お前きちんと責務は果たせよ。…あー、説明するね。八雲君。」
出雲は宍道に対して不安を露わにするが、直ぐに八雲を見て優しく話しかける。宍道も八雲にきちんと聞いておけよと言い放つと、八雲はコクリと頷き、出雲の言葉に耳を傾ける。
「あっ、はい。お願いします。」
「うん。なりかけは、隠語よ隠語。完全に鉄化してない人の事だね。班人とかも言うけど。自我が残っているし、治せるから、間違いなく人なんだよ!!」
出雲がモニターの資料を切り替えると、混合物基本的事項とタイトルのついたファイルを開きながら、みんなに説明していく。
「なりかけは絶対救出する。バトコンとエレクトリカの使命だからじゃない。詳細はTBM《ツールボックスミーティング》でも話すけど、絶対攻撃すんな!何度も言うけど、…人だからな。」
「了解だよ。出雲代理人。」
出雲の言葉に、宍道は真剣に言葉を返した。
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暫くして対策会議が終わると、出雲は阿須那を呼び、セットしたモニターなどを片付け始めた。
「俺は喋るの向いてない。疲れる。」
「そんな事無いです。私は好きです。」
「あら、そう。なら、頑張る。」
疲れているのは確かなようで、出雲は阿須那に励まされながら片付けえを終えると、最後にパソコンを閉じた。
時計を見ると、1時間丸々喋り通していたことにもようやく気づく。
宍道達も伝えられた内容を把握したのか、出雲達には話しかけず、仲間内で作業内容や工程、メンバー割り振りを考えていた。
パソコンなどの機材を元あった場所に戻す為、退室しようとしていた出雲に宍道は話しかける。
「ごめん、出雲君。最後に質問いいかな。今度来るのは出雲君と誰?」
宍道の質問に力強く首を曲げ振り向くと、任せとけと言わんばかりに、出雲は宍道に親指を立てた。
「変態王子、布志名です!先日も恥ずかしげもなく、どぎついオプションを平気で入れていました。男です彼は。属性に変態がついているだけです。」
「ふ、し、な、さん。笑」
宍道は大笑いするが、その裏話に阿須那は、顔を下に向け笑いを堪えていた。
「でも、布志名さんなら安心だわ。」
「じゃな!」
宍道の呟きに出雲は再び力強く振り向き肯定すると、会議室を颯爽と出て行った。
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