Sweeping Up Operations

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Sweeping Up Operations

朝7時50分  まだ朝の早い時間に、晴れ渡る晴空の下を、出雲ともう1人の男が肩を並べると防壁の第1ゲートに向かって歩いて行く。  その出雲の隣で会話する男は色白で、中性的ながら異様に整った顔立ちをしている。身長も出雲より高くスラッとした外見で、俗に言うイケメンという部類に間違いなく入る人物像だった。  ゲート付近の喫煙場所につくと出雲は煙草にライターで火をつけ、美味しそうに煙を吸い込むと、煙を吐き出しながら隣にいる男に話しかける。 「布志名(ふしな)は、なんであの時来なかったの?」 「悪い出雲。こっちも大変だったんだよ。でも、ごめんな。お前の所、ブッ、凄いことになった見たいだけど。フハッ。ごめん。」  布志名は速報で回ってきた出雲のバイブロ事件を思い出し、会話の途中だが、堪えられなかった笑いを所々で噴き出すと、最後に出雲を見つめ完全に笑い声をあげた。 『バイブロハンマー建造物破壊及び落下災害』  この前出雲が引き起こしたバイブロハンマーでの倒壊被害は、各方面に速報で流れており、アルファベットでSと書かれた被災者名も、見れば出雲の事だと誰もが認識していた。 「由里香ちゃんに相当怒られたらしいな。辺り一帯バイブロで破壊するとか信じられないよ。北浦さんも、お前の良い加減な報告に相当怒ってたぞ。」 「始末書書きました。始末書。」  誰からも言われ続けているのだろう。  出雲は若干機嫌を悪くすると、布志名に口を尖らせ言葉を返した。 「それはそうだろ。あれだけ盛大に壊してるんだからさ。俺さ、初め見た時ダイナマイトでも使ったのかと思ったよ。フハっ。」 「はははっ。俺のバイブロはダイナマイト級だからな。…まあ、全然気にしてねーし。隙あらば使うからな。」  出雲が左手を高々と掲げ、バイブロハンマーを左手にセッティングしていることを布志名に見せつける。それを半ば呆れた様子で布志名は見つめていた。 「全然反省してないな、お前。…まあ、言い方悪いけど、その方が俺は気が楽でいいよ。」  出雲を見ると布志名は優しく微笑む。 甘いマスク故か、見るものを魅了できそうな爽やかな笑顔に出雲は言葉を返す。 「あれだな。お前、『イケメンですが。何か?』見たいなタイトルで、ラノベ書けそうだよな。」 「なんだよ、それ。小説書くなら、お前の伝記の方が絶対面白いよ。タイトルは…うーん、なんだろ?」  布志名が考えるそぶりを見せ腕を組むと、出雲は間髪入れず布志名の問いかけに言葉を返した。 「『ババババイブロ』とかで良いよ。」 「ふっ、はははは。ババババイブロって。ごめん。ははっ。ツボにハマった。」  布志名は笑いのツボにハマったらしく、暫く身を屈めると笑い続けていた。その光景に出雲は不思議そうに首を捻ると、布志名に声をかける。 「別に面白く無いからな。お前のツボ、いまいちわかんねーよ。」 ーーーーーーーーrewriteーーーーーーーーーー  他愛ない会話をしながら2人は隔離地区のゲート前までやってくると、そこには既に先般の対対策会議に出ていた面々が顔を揃え、タバコを吸っていた。  編み込んだ長いもみ上げを揺らしながら、歩いてくる出雲に気づいた宍道は、ゆっくりと立ち上がると手を振ってくる。  布志名もそれを確認すると、ゲート付近に集まっているメンバーを見渡し、軽く会釈をして近づく。 「お久しぶりです、みなさん。相変わらず、朝早いですね。今日もよろしくお願いします。」  頭を下げた布志名に、宍道が近づくと布志名の肩を軽く叩き、言葉を返す。 「お久しぶりっす布志名さん。あと隣の人も、お疲れ様でーす。」 「隣の人ってなんだよ!お前、売っとんのか?」  出雲が口に咥えていた煙草を、即座に宍道に指で弾き飛ばすと、宍道はそれを反射的に回避する。 「あぶねーな、この人。ごめん、ごめんって、出雲君。」 「許さんからな!それに、なんでみんな布志名だけ、さんづけなんだよ。…もう俺、今度から様付けしか認めない。出雲様だ!」  出雲の思いつきに、皆は首を傾げ、目を瞑る。場が静まり返ると、宍道は小声でボソッと呟く。 「…馬鹿だったら、つくんじゃないかなー。現にみるちゃんとか、そう呼んでるし。」 「…あぁ?」  出雲が凄んだ顔のまま、宍道の前まで行くと軽く宍道の頭を無言で小突く。そして、ファイリングしてある一冊の点検シートを宍道に投げつけた。 「武器の稼働テスト終わったら、点検シートにきちんと記録つけとけよ。」 「もうー怖いなぁ、出雲くんは。…まあ、言われなくても、基本だからやるけどね。」  軽口を叩きながらも、宍道はそれを受け取ると厚めのシートを広げ、使用する武器や機材を綺麗に並べていく。  そして各々のメンバーに、きちんと点検しろよと喝と指示を出す。 「針刺した?」  出雲の言葉に、宍道はボックスから容器を取り出し言葉を返す。 「バッチリっす。先に渡しときますね。」  そう言うと穴道は、極少量の血液の入った容器を数本、出雲に手渡す。出雲はそれを受け取ると、宍道に怪訝な面持ちで言葉を返す。 「お前に任すと心配だからなー。因子チェックは、俺も確認するからな。」 「信用ないなー。まあ、ダブルチェックは基本っすからね。」  出雲は受け取った容器を持ってきた小型の機器に一つ一つ丁寧に設置すると、瞬時にでてくるデータを保存していく。  宍道はその間、自分につけていた安全帯一式に、シートの上に置いていた点検済の武器や道具を腰袋にセットしていた。    その様子を見ながら布志名は、今回の作戦で使用する資料や地図など掲示物を広げると、出雲の書いた重要ポイントなどをマーカーで強調していく。  出雲も血液チェックを終えると、布志名と会話をし、作業内容などを細かく最終打ち合わせすると、ようやく朝の準備を整えた。 「こんなとこだろ。…よっしゃ!やんぞ、集まれ!」  出雲が煙草を消し、みんなに集合するよう手でも合図すると、今日のチームメンバーが出雲の周りに集まってくる。 「じゃあ、はじめに体調確認するね。」  そう言うと出雲は、チームメンバーの名前を点呼し始める。 「布志名、 体調は?」  「いいよ。」 「宍道。」 「元気でーす。元気すぎまーす。」 「あっそ。死ねよ。」 「禿げ。」 「禿げじゃないし!剃ってるし。」 「…あー、じゃあ、和尚さん。」 「…もう、いいよ。体調は良いです。」 「エロゲ星人」 「ばっちりっす。昨日もやりました。」 「何をですか?」 「ナニですね。」 「…はい、クソ元気っと。」 「八雲君。」 「はい、元気です。」 「津和野さんは酒が残っているから、アルコールチェックしてから参加してくださーい。常時酒臭いです。」 「人聞きの悪い事言うな。残ってねーよ!問題ねーからな。」  人員の体調確認が終わると、出雲は体調確認欄にチェックをつけると、良と印をつけた。 「よしよし、みんな大丈夫そうだな。もちろん出雲さんは、…ハイパー元気です!!」  顔をドヤらせると、出雲は頭上に高々と拳をつき上げる。   その自信満々な顔と態度に、皆が呆れながら心ない拍手を披露していた。 「さーて。体調は、ばっちりって事なんでやりましょうか!みんな因子チェック問題なしだからね。」  出雲が先程行った血液検査の結果が映るデータシートをみんなに見せながら、話を進めていく。 「OK、出雲くん。エブリシングOK。」 「意味がわからん英語言うな。宍道。お前、帰れ!」 「つめてーな。」  出雲は宍道にシッシッと手であっちへ行けと合図した後、本日のミッション内容を説明する為に、掲示物に貼られた1枚の大きな地図の前まで移動し、皆が注目するよう指を差した。 「今日は、ここG30区から2班に分かれて探索するから。…ルートはこんな感じかな。GPSナビとオペに従って頂戴。」 「はい。」 「布志名 、八雲、津和野さんがA班、班長は布志名。」 「うん。わかった。」  班長認定された布志名が出雲に言葉を返す。 「さっき名前呼ばれてないのがB班、班長は宍道。俺が統括指揮と遊撃、サポート要員。そういう風な感じでいくから。」 「出雲君遊撃とか怖すぎるでしょ。次は何壊すの?」  宍道の軽口に出雲は左腕についたバイブロの骨組みを無言でガチャガチャと握り込む。威嚇するようなその仕草に、宍道はひたすら両手を左右に振り続けた。 「宍道。バイブロ痛いらしいぞ。」 「痛いじゃ済まないよ。死ぬ死ぬ。」  出雲が宍道に悪魔的に微笑んだ。 ーーーーーーーーrewriteーーーーーーーーー  その後も作業内容や危険ポイントなどの説明は続く。倒壊する可能性が高い場所、武器の使用制限、緊急時の離脱撤退、的確な指示はまだ続く。 「25区まではこのルートで各班進む。時間的に一度27区ゲート付近で合流。昼食後にまた散開する。」 「はい。」 「ハイブリッドは各班で対応を頼むけど、危ないと感じる前に応援要請は早めにな。すぐ、俺がサポートするから、以上。…じゃなかったね。『なりかけ』について説明しなきゃな。」  そう言うと出雲は、右肩に掛けていた肩紐を取ると、救急箱の中から小さなアンプルを取り出した。それを、みんなに分かるように右手でかざす。 「これがアンプル。ハイブリッド因子の抑制剤だね。宍道と布志名にも余分に渡してある。なりかけを見かけたら報告と連絡を徹底してくれ。直ぐに俺が行くけど、出来るだけ優しく話しかけて、自分たちは助けに来た事を伝えてくれ。」  出雲の呼びかけに皆が頷く中、宍道は反論するよう首を捻ると言葉を返す。 「でも、出雲くん。なりかけは、あんな奴らがいるから。基本逃げるからねー。」  宍道の言葉に出雲の顔が瞬時に不機嫌になる。片方の眉を歪ますと、チッと小さく舌打ちする。 「まあな。そりゃ逃げ出したくなるだろうよ。…殺す奴がいるんだから。」 「…すね。」  出雲が不機嫌に顔を曇らせながら喋り終えると、宍道も歯痒そうに唇を軽く噛むと、頷き返した。 「…だから、俺達で捕まえる!手荒になるけど、逃げるようなら拘束具を使っても良いからな。俺たちが捕まえれば、後は医療班にお任せできるから。」 「了解っすよ。出雲くん。」  出雲の声に、宍道は応えるように力強く頷くと、言葉を返した。 「任せたからな、宍道。…ヨシ!瞬時判断、即展開!」 「「了解!瞬時判断、即展開!」」  そう大声で言い放った出雲に皆が続き言葉を復唱する。それを見た出雲は頷いた後、スマホを取り出し作業開始を告げる連絡をかけた。 「出雲です。…お疲れ様です。現時刻8時30分。今から10分後にG3地区の掃討、救出作戦を開始します!」
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