雨の放課後

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「だから!好きなんだって!ずっと前から好きなの。お前の事!」 私の手がピタリと動きを止める。 そっと見上げると顔を真っ赤にした彼が睨んでる。 どう見ても愛の告白した直後には見えない。 不意に頭を過る言葉。 『大切なものは、目には見えない』 つまりはこういうことなのか? 「……信じない」 ちょっとだけ拗ねて言ってみる。 「……え?」 そうだ、もっと困れ。 動揺する彼に、意地悪な私が心の中でほくそ笑む。 傷付いた分修繕させなきゃ、私だって気がすまない。 「今までブスって言ったのと同じだけ可愛いって言ってくれたら、まぁ……信じてあげても良いかな?」 「え……」 彼の喉仏が動いたのが分かった。 彼の手の内にあるヘアピンをぎゅっと握ったかと思うと、私の顔の高さに合わせて跪く。 反対の手がそっと私の髪に触れて耳に掛けた。 ぎこちない手付きでピンを止める彼の、吐息が掛かる程近い。 不思議とそれが……嫌ではなかった。 世の中に星屑程ある他愛もないコイバナの中の一つの話。 「……か、可愛い」 「はい、まだ一回。先は長いね」 それが私と彼との、恋の話。 ヘアピンの中の星屑みたいに、それは眩く光る。                     了
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