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今日は大好きな小説家の新刊が出る日。
通りから中を覗く。
……良かった。今日はおばさんだ。
ドアを開けるとカランコロンと鈴が鳴り、おばさんもこちらに気が付いた。
「あら、杏子ちゃんいらっしゃい。久し振りね、元気?」
カウンターから身を乗り出して聞いてくる。
おばさんはおしゃべり好きだから、お客さんを捕まえては長話をしようとする。
「ごめん、おばさん。私今日は急いでいて……」
「あらあら、ごめんなさいね。今度またゆっくりしていってね」
「……すみません」
申し訳なさそうな振りで謝ると、私は急いで目的のものを手にとってカウンターへと向かおうとした。
すれ違い様、一冊の本が目の端に入り込んだ。
……懐かしい。
その本に手を伸ばす。
カランコロン
その音で我に返り、慌てて手を引っ込めてカウンターへと視線を送る。
……遅かったかぁ。
思わず眉根を寄せた。
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