ある日

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この本屋のバカ息子は、高校生になってから学校が終わるとここの店番をするようになった。 そのせいで、私は本屋でゆっくりと本選びもできなくなってしまった。 仕方無く、どうしても読みたい先程の新刊だけをとぼとぼと重い足取りで彼の元へと持っていく。 「……何だよ、お前メガネじゃなくなったのかよ」 本のバーコードを読み取りながら、彼が言う。 別にあんたには関係の無い話。だから、無視。 財布からお金を出してキャッシュトレイに置く。 「なあって……聞いてんの?」 「別に、関係無いじゃん」 「何だよ、それ。高校デビューかよ、似合わねー」 ほらね、こうやって簡単に傷付くことをわざわざ言ってくる。 「早くお釣りちょうだい」 手を差し出す。 ぎろりと睨むその目付きがまた腹立たしい。 「なぁ、三年に告られたって本当?」 何で知ってんだよ。クラスだって違うのに。 というか、本来高校だって違う予定だった。 私よりバカだったからようやく高校は解放されると思っていたのに、まさか同じ高校受験するとか聞いたときはショックだった。 でもバカだし落ちるだろうって、その時はあまり深く考えなかった。 なのに、合格発表の後学校に報告しにいったときに聞いた言葉に私は耳を疑った。 ……有り得ない。 でも、大丈夫。クラスは端と端だから、まだ救い。
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