ある日

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「なぁって。さっきからちゃんと聞けよ人の話。付き合ってんの?」 「……それも関係無い。それより早くお釣り頂戴って!」 本当に嫌だ。本一冊スムーズに買えないのか、ここは。 わざとらしく大きなため息一つ。 「……今度デートするかも。早くちょうだい」 「……」 ボソボソと何かを口ごもりながら言っているが聞き取れない。 「はい?」 イラつきながら聞き返した。 「そいつと付き合うの、止めとけば?」 彼もイラつきながら返してくる。 「尚更、関係無い。私の事嫌いなら放っておけば?無視して良いから。て言うか、無視して。私も無視するから。それで良いじゃん。それより、早くお釣り!」 私、さっきからお釣りの事ばかり。 だって仕方ないじゃん。今月はあと、二冊欲しい本が出るんだから。 てことは、今月あと二回もここに来なくちゃいけないかと思うと本当に憂鬱だ。 違う本屋、本気で探そうかな……。 「そんなに私の事が嫌なら、もうここにも買いに来ないから安心して。お釣りも良いや」 カウンターに置かれた本だけ受け取ろうと手を伸ばす。 それをすんでのところでかっ拐われた。 さすがに私もぶちギレる。 「いい加減にしてよ!私があんたに何したってんのよ。お互いに嫌いなんたから、相手の存在消せば良いだけの話でしょ?」 「……」 ほら、まただ。 「男の癖に、言いたいことあるならはっきり言ってよ!」 「だから、俺は……嫌いじゃないって」 はぁああああ!? 「あっそ。どうでも良い。私は嫌いなの。もう二度と話し掛けてこないで。顔も見たくない」 身を乗り出して本だけ引ったくる。 お釣りはもういい、諦めた。 こんな奴と訳の分からない押し問答何てしたくなかった。
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