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鳥がさえずり、窓からカーテンの隙間を抜けて柔らかな日差しが差し込む中、まだ幼さの残る男とも女とも見える人物が気持ちよさそうに寝息を立てている。
その隣には似たような顔がもう一つ、これまた気持ちよさそうに寝息を立てていた。
そう彼らは双子なのだ。
兄の方がユート、妹の方がエルート。
そっくりな顔立ちのその双子は母親のアリスでしか見分けがつかないほどだ。
寝息を立てる二人の安眠を邪魔するかのように壊れるのではないかというほど音を立てて、部屋の扉が開け放たれた。
しかし、そんな物音で起きるような子達では無いのか相変わらず起きる気配すらなく、スヤスヤと寝息を立てている。
それに呆れたように腰に手を当てているのは、母親のアリスだ。
まだ若々しさの残る顔立ちのアリスからはとても二人の子供がいるなどと感じさせない。
「起きなさーい」
耳元で大声を出すも無駄。
一向に起きようとしない二人に呆れたように息を吐くと、隠し持っていたフライパンとおたまを取り出す。
それを目の前へと持ってくると、おたまでフライパンを叩く。
流石にその爆音には堪らずに二人が耳を抑え、呻き声を漏らす。
トドメの一言とばかりにアリスが一言を放つ。
「朝ご飯ができてるわよ」
その一言に二人がガバッと起き上がった。
片方はガタガタと震え、もう片方は顔に大量の汗をかいている。
「ようやく起きたのねねぼすけさんね」
呆れたように言う母親にそれどころではない双子の兄妹。
片方が恐る恐ると口を開いた。
「もしかしてお母さんが料理作ったの?」
「当たり前じゃない」
その返答にガックリと肩を落とす二人。
そんな様子に気づいた様子のない母親は、向きを変えると開け放った扉を閉めようと出て行こうとした。
扉が閉まる直前にこっちに目線を向け、ニッコリと微笑む。
「冷めないうちに来なさいよ」
ピシャリと閉まる扉を見つめ、呆然とする二人。
何故ここまで二人が反応するかと言うと、母親のアリスは洗濯や掃除こそ出来るほうなのだが、料理の方はからっきしなのだ。
同じ具材を使ったとは思えないほどの不味さ。
見た目が美味しそうに見えるので皆が騙されてしまうが、一口それを口にしたのならば、記憶すら飛ぶくらいにやばい代物なのだ。
「どうしょう」
二人が真っ青な顔で互いの顔を見合わせる。
そして息を漏らした。
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