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こうしていても仕方ないと身体を起こし、着替えると重い足取りで一階へと降りていく。
階段を降りると、台所の方から機嫌良さそうな母親の鼻歌が聞こえる。
これで食べずに逃げてしまえば、母親が悲しむだろうと思うと食べるしか道は残されていない。
歯を磨き顔を洗うと台所へと向かう。
挨拶を二人で交わすと席につく。
皿に盛り付けられたものを震える手で箸を持ちすくう。
食事を終え、気持ち悪くなりそうなのをこらえる。
玄関からピンポーンとなる音が聞こえる。
「はーい」
と母親のアリスが玄関へと向かうのが見えた。
遠目から玄関へと目を向けるユート。
アリスによって玄関の扉が開くと、扉の向こうには見慣れた顔。
小さい頃から一緒に過ごしてきた四つ上の近所のお姉さん。
名前はリナと言う。
父親と二人暮らしでユート達とは真逆だ。
ユート達は母親と三人暮らしである。
父親は行方不明だと聞かされている。
「ユート、エルート、リナさんよ」
アリスの声に二人が玄関へと顔を出す。
二人に気づいたリナが顔を上げる。
「おはようリナ」
エルートが声をかけると、笑顔で答えるリナ。
その様子を見つめるユートはどこかボーッとしている。
「ユート?」
リナが首を傾げ、ユートの顔をのぞき込む。
ユートは驚いて顔を真っ赤にさせ、飛び上がるようにして後ずさる。
その様子にリナはキョトンとしているが、エルートは楽しげにクスクスと笑いをこらえている。
そう、ユートはリナに想いを寄せているのだ。
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