俺たちの関係

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 風太は俺からクルリと背を向けると、オブジェの丸い穴から外を見た。 「あれ、俺んちなんだ。ちょうど二階の窓が見える。あれ、俺の部屋」  いつもと同じ口調だけど、微妙に声が震えてる気がする。  意味のない会話をする風太。凄く頑張ってる。俺は表情を明るく取り繕って、穴を覗いた。 「おお、よく見えるな」 「近いだろ。……駅まで送らなくても大丈夫だよね?」  風太は窓に顔を向けたまま言った。俺は努めて明るい声をだした。 「うん。大丈夫……じゃあ、また明日。……学校で」 「おう。また」  風太はそう言ったまま、ずっと家の窓を見ていた。動こうとしない風太を見ていた俺に「帰ってくれ」って風太のお願いが聞こえた。  足を引き、風太に背を向けてオブジェから出た。一歩二歩と離れて行くのがなんとも切なくて、寂しい気持ちになる。  べつに別れじゃない。ただ家に帰るだけだ。これからも友達。変わらないと風太だって断言したし、それを望んでる。俺だって……。なのに、この後ろ髪を引かれる感じはなんなんだ。  ずっと俺を見ないで、穴に向かって話していた風太。風太も大丈夫じゃないのは一目瞭然だ。  俺だって。やっぱり、こんな状態で上手くやっていける気がしない。小手先で誤魔化したところで、ちぐはぐになってしまうのは目に見えてる。学校のみんなも俺たちの違和感なんて直ぐに気づくだろう。王様の耳はロバの耳だ。  踏み出した一歩を止め振り返り、さっきよりも二倍の歩幅でズンズンとカタツムリめがけて歩いた。 
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