俺たちの関係

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 風太は去年、入学した時に友達になった。たまたま同じクラスだったし、たまたま班分けで同じになったのがキッカケ。温厚で割とガタイもいいし、女子受けもいい。でも本人は彼女を作ろうという気はないみたいだ。どうやら密かに好きな子がいるらしい。でもそういう話題になると直ぐトイレへ逃げ込むか、話題を変えようとするから真偽の程は不明。色恋話をペラペラ話すのが苦手なんだろう。  俺もその辺は理解できる。照れくさいし、ひやかされたくない。自分が誰を好きだろうと、それは自分と相手とのことであって周りは関係ないことだし。わざわざ打ち明ける必要なんてないよな。  実のところ俺自身、他人のイロコイは特に興味もない。ワイドショーとかの芸能人スクープを見るといつも思う事は一つ。「放っといてやりなさいよ」  藤川と山本さんのように既に付き合ってる連中もいるけれど、お付き合いなんてものは俺たちにはまだまだ先の話のようだ。 「じゃあな、風太、霧島」 「おう」 「おつかれ」 「またねー」  クルリと俺たちに背を向けると、途端に二人の間の距離が縮まる。見上げる山本さんに顔を向ける藤川。なんとも睦まじいことで。 「そういえば、この前買ったCD。おまけのMVめっちゃかっこよかったよ」 「へー」 「イントロから歌い出しのところなんてもう、ワクワクっつーかゾクゾクつーか音が大きくなってくるとこなんかこう、『キターーーー!』って感じ」  俺は胸の所で構えていた拳を高らかに天へと突きあげ声を張り上げた。風太はそんな俺を生ぬるい眼差しで見る。 「んだよぉ」  俺はお子ちゃま扱いする風太のケツにビンタを喰らわせてやった。  
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