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俺たちの通う県立凸凹高校から最寄りの駅まで徒歩十五分。
「あ、そだ定期買うんだった」
駅に着くと風太がボソッと言った。
定期入れを鞄から出し、今月で切れるSuicaを中から取り出す風太。その時Suicaの下からヒラリと白い紙が落ちた。風太はそれに全く気づかず窓口へ歩いて行ってしまう。
「なぁ、なんか落ちたよ。これ……」
落ちた紙を拾い上げると写真のようだ。ピラリと表を向けるとそこには俺がいた。
その写真は、去年の体育祭の時のものだった。ど真ん中に映ってるのは俺。
俺は体操着の胸のとこを摘まみ、首の汗を拭っていた。だから裾が持ち上がって腹チラしてる。それはそれは結構なめくれ具合。体操着の短パンも腰履きだし。
誰かに笑いかけてる俺はなんていうか、屈託ない笑顔。でも腹チラ。へそ出し。もう一度よく写真を確認した。被写体はどっからどうみてもやっぱり俺だった。ど真ん中だけど、角度は正面からじゃなく隠し撮りっぽい。それに、こんな写真俺は一度も見たことがない。
ヌッと大きな手が伸びてきた。写真から顔をあげるとすごく無表情な風太がいた。
「それ、俺の宝物だから。返して」
「へ?」
たから……もの?
思いっきり俺の顔は引き攣っている。とりつくろいようがないくらいに。
風太は俺の手から写真をサッと取り上げると、何食わぬ顔で定期入れへ入れてしまった。
なんで、そんなフツーなの? え? 宝物って言った? ああ? どういうこと?
俺は照れるというより、困るというより、理解不能に陥り後頭部をポリポリと掻いた。
風太は窓口で定期を買い、いつもと同じように改札を抜けていく。写真のことを完全にスルーして。
――放っておいてやりなさいよ。
いやいや、俺当事者だし。無理でしょ。
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