俺たちの関係

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 前を歩く風太の背中に無言で投げかける。もちろん俺の疑問は風太に届くはずもない。  ホームはいつもの帰宅ラッシュ。同じ学校の生徒もサラリーマンもわんさかいる中を、黙々と歩く。階段を上り四番線へ降りる。三号車のマークにズラリと並ぶ人たち。  その最後尾に風太と一緒に並ぶ。  風太はここから駅五個。俺はその次の六個め。  隣に並ぶ風太をチラリと見る。 「……腹減ったなぁ」  前を向いたまま風太がボソッと呟いた。 「おお、うん」  え? お腹? あんまりにも見事なスルーっぷりじゃないか。本人だぞ? お前の定期入れに入れてお宝とやら言ってる、その張本人なんだよ? バレちゃったんだ。なのに腹減ったとか言ってる場合なのか?   凄く謎。だけど、こんなところで話す内容じゃないよな。周り人いっぱいだし。  アナウンスが流れ、ホームへ電車が滑り込む。ゾロゾロ順番に中へ入り、ギュウギュウ詰めのドア付近を陣取った。  手すりと座席のL字空間のべスポジに入り込んでいる俺はあんまり関係ないけど、今日も半端ないギュウギュウ感。  いままであんまり気にしていなかったけど、風太がドアに手を突いてるから、ここは余裕のある空間になっていてべスポジなんだよな。風太の後ろにいるサラリーマンの群れからの圧迫は全部風太が受けとめている。これって、圧迫から俺のこと守ってる? そういうことなんだろうか。なんせ、宝物だし。   …………。  自分がすっごく調子乗りになってる気がした。でも、ちょっと後で聞いてみた方がいいのかな? それだったらそうで、「お世話になってます。ありがとう」って言うのが筋な気がするし。  違っても「ふーん」で終わらしゃいいよね。
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