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風太の降りる駅が近づいてきた。さっきの停車駅は乗り換え駅だから、多くの人が降りていった。ここまでくれば車内もだいぶん空いている。相変わらず風太は窓に手を突き、外を見たままだ。
「じゃ」
「うん」
アナウンスが流れ反対側のドアが開く。風太はいつものように短く言って外へ出た。俺もその後にシレッと続く。風太がチラッと後ろを見て、ギョッとした顔で振り返った。
「なんで降りた?」
「うん。腹減ったって言ってたじゃん。なんか食う?」
風太はポカンと口を開けて俺を三秒くらい見てたけど、「じゃあ」と言って改札口を抜けた。
電車の中でできない会話だなと思ったけど、じゃあどこならできるんだろう?
駅の横にはコンビニがある。風太はそこでピザまんを二つ買うと「ほれ」と俺に寄越した。
「お、ありがと」
俺が誘ったのに、奢ってもらえるなんてありがたいけど、催促したみたいで申し訳ないな。
外はすっかり日が沈んで暗くて寒い。
「悪いな、奢ってもらっちゃって」
ピザまんをちょっと掲げ包みをめくり、オレンジ色のふわふわホカホカに齧り付く。
風太がいつもの表情で言った。
「いいから。何も気にしないでくれ」
暗に無かった事にしてくれってことだろうけど、知ってしまった以上俺だって気になる。気にしたままよくわからない状態でモヤるのって、これからの俺たちによくないって言うか……だから俺は真相を確認しておきたいだけなんだけど。
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