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偽書
4月14日
黄金の剣は今のところ無事だ。
この剣のおかげで芸能事務所は大儲かりだ。
それにしても安田の野郎、何で私の秘密を知っていたのだろうか?里見学園の理事に就任して1年、貧困に喘いでいたこの私立学園も少しずつ潤いはじめている。
檻の中の動物たちを眺めていた。
スマホが鳴った。諸岡からだった。
「どうした?」
《ちょっと気になることが》
「学園の生徒に真知子って女がいるのご存知ですか
?」
「ああ、知ってる」
《彼女のFacebookから関係者を洗い出したんですが、その中に高木の名前があったんです》
高木……………………嫌な名前だ。
アイツはこの学園の裏切者だ。
高城とは別人だ。
「推理作家として活躍しているようだな?何としてでも奴の息の根を止めろ」
《わかりました》
パトロールに出掛けた。
音楽室に向かう。
ベートーベンの額縁が若干ズレている。
まさか?中に誰かいるわけじゃないだろうな?
秘密のボタンを押して隠し扉からアンダーグラウンドに足を踏み入れる。
S字の鍔が特徴的な剣が姿を消している。
私がスペインから手に入れたモノだ。
政治家たちの死体が転がっている。
一体、誰が?
犠牲者の1人、橘はもともとはベンケイだった。
武蔵坊弁慶ではない。
横浜の貿易商を総称していう。
古本屋がよく使う隠語だ。
祖父は都内にある本屋を営んでいた。
偽書(ギショ)で荒稼ぎした極悪人だ。
価値のない本を高値で売ることだ。
奥に進むとテーブルに新擦本(アラズレボン)が置かれていた。新書ではあるが古書のような感じのする本だ。地図なんかもその類いだ。
カジノと本屋を兼ねていたようだ。
切手やマッチ、古時計などのいわゆる下手物も棚に陳列している。
ポーカーでもやっていたのか?ベンケイの近くにはカードが散らばっている。
犠牲者は皆、撃たれて死んでいた。
デジミスで見た死体と同じだ。
死体の周囲に5、3、9のカードが散らばっている。事件解決には繋がらない偽装されたメッセージだった。
なるほど、デジミスの参加者に罪を着せようって腹か?無能な刑事に推理してほしい、犯人はそう願っているハズだ?
バスンッ!銃声が聞こえた。
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