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音楽室殺人事件
陽子は白のブラウス、紺のネクタイ、紺のブレザー、紺のスカートってルックスで職員室にやって来た。真知子、早く死なないかな?
誰もいないみたいだ。
深夜1時だからな?いなくて当然だ。
音楽室にやって来た。
整然と机が並べられている。
窓の外ではカエルが喧しく鳴いている。
《ロケット鉛筆》を筆箱から出した。
昭和40年代に流行った鉛筆だ。
芯ユニットが11本、差し替えることにより新しい芯が使えるようになる。ロケットを彷彿とさせる分離型ギミックだ。
陽子はベランダに出てロケット鉛筆で雨蛙をグサグサ刺した。
女子更衣室で《香り消しゴム》を見つけた。
チーズケーキの形をした消しゴムだ。
梅干しの消しゴムを見つけた者にはプレゼントがもらえるって噂だ。
《デジミス》の『音楽室殺人事件』では二宮って先生がこの場所で首を絞められて殺される。
ウチの学校には二宮和子なんて先生はいない。
知り合いが文具店に勤めているのだが、昭和20年以後に販売された消しゴムMONOシリーズは、関東はMONO、関西はRadar、静岡はKEEPとエリア別に種類があるらしい。
そうそう、『音楽室殺人事件』の第1章はambush《待ち伏せ》だ。二宮和子はあこがれの松本順次から放課後、音楽室に呼び出されて殺されてしまう。
第2章はburn marks《焦げ痕》ってタイトルだが、まだ内容は描かれてない。
タイトルから推測すると炎が関係してそうだ。
失火か?それとも放火だろうか?
小説のなかの校舎はパノプティコン式の建物だ。
刑務所に多く用いられている建築方式で、円形型の3階建て、中央部には監視塔がある。壁に沿った環状に教室がある。
プライバシーがなく、教育者は生徒の行動を全て支配できる。
教室に入りカメラを仕掛けた。
陽子はこの学園のカラクリを知っていた。
天井には裏蓋がある。そこにCCDカメラを仕掛けた。支配者になった気分だ。
陽子の家は江戸時代、牢獄を管理していた。
東日本は伊豆、西日本は大坂、福岡藩は玄界島、薩摩藩は奄美大島、鬼界ヶ島にそれぞれ罪人を流罪していた。
この学校も元々は牢獄だった。
『音楽室殺人事件』の作者はこの学校の創設メンバーにいるはずだ。
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