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労基署の豊川署長から感謝状を貰った。
「おふたりの活躍により犠牲者が出ずに済んだ」
豚女は逮捕された。当然だろ?
「ゴリアテはどうなるんだ?」
高城は父親くらいの年齢の署長にタメ口を叩く。
「しっかりとした体勢になるまでは休業になりますな?」
「アソコがなくなると困る住人がたくさんいる」
高城が言った。
鏡石駅前は閑散としており、コンビニがポツンとあるだけだ。パンを買ってベンチで食べるとスモーカーがやって来て煙たい思いをする。
2020年の戦争により鏡石は粉々になった。
安田は眠気と必死で戦っていた。
昨夜は痴漢を徹夜でマークしていた。
ルイージ公園って駅前にあるところでエリカは被害を受けたらしい。近づいてきた目出し帽の男に尻を触られたらしい。
夜更けの公園でエリカが何をしようとしていたかは知らない。不可解なのはエリカの家のルートではないってことだ。帰り道に痴漢にあったのではないらしい。デートの待ち合わせでもしていたのか?
労基署を出る。
2階建ての小さな警察署のボスの部屋だ。
踊り場から広大な田園風景が見えた。
「結局、痴漢は捕まったのか?」
「イヤ、昨日は現れなかったよ」
階段を降りているとグラサン越しに亡霊が見えた。長い髪の少女だ。
「何かあったのか?」
安田の独り言に高城が眉をひそめる。
「なに人の顔色うかがってんだよ?」
「違うよ、見えるんだよ」
「マジで?いるのかよ?グラサン貸せよ」
《もしかして、ワタシが見えるの?》
「あぁ、キレイな幽霊だ」
前から着た署員に咳払いされる。
「人を幽霊なんて酷いじゃないか?」
その署員は頭が禿げ上がっている。
「あんたは幽霊じゃなくて河童だよ」
「何だと!?」
《クスクスクスクス…………》
少女は楽しそうに笑っている。
「いい笑顔だ?」
「これが笑ってるように見えるのか!?」
署員が憤慨している。
「アンタじゃないよ、ベイビー?俺たちとデートしないか?」
「わけの分からん奴だな?生憎、男に興味はないんでね?」
「だから、アンタじゃないって」
「ウワァァァァァッ!」
河童が発狂しながら階段を駆け上がっていく。
「君、名前は?」
《サキコ》
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