サキコ

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サキコ

 4月12()  高城はスマホを持ったまま固まっていた。  教室では退屈な数学の授業が行われている。  このサキコってのは咲子のことかも知れない。  咲子は大切な友達だ。 「真知子、授業中だよ?」    隣の席の安田くんに叱られた。  ん?安田?この小説を書いてるのも安田ってゆーんだけど、偶然だよな? 「あぁ、ゴメン」 「没収されちまうぜ?」    放課後、ワタシは研究棟に向かった。  校庭を挟んだ真向かいにある煉瓦造りの3階建ての建物だ。  里見学園に入って2年、少しは環境にも慣れた。  授業はあまり面白くないけど、文芸サークルでは充実していた。  運動が苦手なワタシは小・中ともに部活をやったことがない。一応、卓球部に入っていたが強制的だったし?3ヶ月でサボるようになった。  その点、里見は強制的じゃなかったからよかった。最初は帰宅部だったんだけど?ママが知らない男の人連れ込んだりして居場所がなくなっちゃった。  1年の11月からやるようになった。  別に人じゃないよ?Hでもないよ?サークルをやるようになった。  文芸サークルは2階にあった。  里見学園には職員室がない。  重要なときに会議室に集まる以外は個室にそれぞれこもってる。  ドアをノックした。 「宝木先生?」 「はいは~い?真知子ちゃん?」  ワタシの名前は高城真知子、ワタシこそがこのストーリーの主人公だ。  宝木恵美先生がドアを開けてくれた。  宝木先生は2年4組、隣のクラスの先生だ。  担当科目は国語だ。 「ブー、来たのか?」  パンチパーマの赤山が言った。  床で腹筋をしてる。  3年生、彼が部長だ。 「そのあだ名やめてもらえます?」 「そうよ?レディーに対して失礼でしょ?」  宝木先生が柔らかな口調で叱る。 「もっと強く叱ってくださいよ!ワタシのことバカにしてるんですよ、この人」  赤山に人差し指を突きつけた。 「フィンランド流なのよ」  宝木先生は日本生まれフィンランド育ちだ。  フィンランドの教育では大声で叱らないらしい。  穏やかに叱ることで子供を自立させるのだそうだ。フィンランドでは人と比較する教育をしないそうだ。日本はまだまだ差別国家だな?  宝木先生が神妙な顔になる。 「咲子ちゃんまだ学校来ないの?」  
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