亡霊レストラン

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亡霊レストラン

 安田は高城と別れて、サキコとルイージ公園にやって来た。ロケットの開発に忙しいようだ。  サキコは近くにある国道44号線で轢き逃げされたらしい。 「犯人は分からないの?」 《殺してやろうと思ってコッチの世界に戻ってきたんだけどさ?ナカナカ見つからないんだよね?》 「交通課の奴に聞けばよかったじゃん?」 《そう思って警察署に行ったんだけど、誰もワタシの事件を口にはしなかった》 「役所での爆弾騒ぎでそれどころじゃなかったんだよ、きっと」  昨夜遅く、役所に爆弾を仕掛けたのと脅迫電話があったそうだ。逆探知の結果、ルイージ公園の西門にある公衆電話から掛けられたことがわかったらしい。 《ワタシの存在ってそんなものなのかな?》  不審者に思われたくないのでスマホを耳に当てて、サキコの亡霊としゃべった。 「そう嘆くなよ?幽霊だし見えないんだから、殴って吐かせればいいじゃない?」 《暴力を振るったら地獄から永久に出られなくなる》  サキコは天使と悪魔のborderだ。  天国なら永久の快楽が求められる。  天国で罪を犯すと人間界に戻る。  その罪とは人を殺すことだ。  天国では殺人以外の犯罪が合法だ。  borderは天国ほどの快楽もなければ、地獄での血を吐くような訓練もない。  地獄はどんな善意も帳消しされる。  borderなら良いことを積み重ねれば天国に行ける。 「悪人だったら殺してもいいんじゃない?亡霊なんだろ?天使なんて善人を殴っても罪にならないんだろ?」  このまえ病気で死んだ高校時代の友人と話したが、通行人の頭を殴ったけど捕まらなかったそうだ。 《ワタシは天使じゃないからさ?》 「よし、俺が犯人を探し出してやるよ!」    高城は殺戮時代と呼ばれる中世ヨーロッパにタイムスリップした。チャールズ&ジェームズって最凶な兄弟と友達になった。  長老派ガヴェナンターを迫害し、若い連中が牛耳る世界だった。  ハギスってよばれるスコットランドの伝統料理も食べた。  シェフも勿論死人だ。  ミーヤ郊外にある寂れた洋食屋だ。  Meerはドイツ語で海だ。 《アンタは何で死んだの?》  シェフの亡霊が尋ねてきた。 《肺癌だ》 《タバコの吸いすぎかい?俺は胃癌だ、どうだ?うまいかい?》 《まぁまぁだな?》  カラリン、カウベルの音が聞こえた。 「やっぱりここだったか?」 《何だ?貧乏探偵か》
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