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「アポロン様、私の事は覚えてらして? 『合唱』と『舞踊』のテレプシコラーですわ」
「て……天ぷらコーラ?」
「じゃあこの私は? 『独唱歌』のエラトーですの。っていうか、クレイオー離れなさい」
「はぁ……確かになんか偉そうですね(あ……おっぱい外れた)」
「あ、あの『抒情詩』のエウテルペーなのですが……」
「えっ、えーっと……」
自慢じゃないが、オレはカタカナ名に弱い。
しかも、インテリな会話にも疎い。
どくしょうかってどういう漢字書くの?
じょじょうしってなにそれおいしいの?
かわるがわるいろんなことを言われたが、全くなんのこっちゃであった。
オレが彼女たちの事が分からないというのはすぐに認識されたらしい。
なんか、「お医者様はどこかしら」みたいな雰囲気になり、誰かが呼ばれてやってきた。
やってきたのは、左手に杖を持った若い男だった。
これが医者なのか。
でも、やっぱり普通な感じじゃない。
杖には太いヘビ。
ガラガラヘビとかそういう系のヘビが二匹、しかも「シャー!」とか言ってる奴が巻き付いていた。
オレは一瞬ビビったが、ヘビはオレを見ると何だか大人しくなった。
あれ、大人しい奴らだったのかな。
「これはまた随分とお若くなられましたな」
男はそう言ってクスクスと笑った。
待ってよ、お姉さん達よりもっと視力のおかしい人が来ちゃったの?
オレ、10代で子供とか作った覚えないわよ。
っていうか、お兄さんオレと同い年くらいよ、むしろ。
そう思っていると、男はオレに深々と頭を下げた。
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