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運命はオレを見放したのだろうか。
この世に馬室哲学という男をつくりたもうた神は、いつまで経ってもどうしようもないこのオレに、今更何かを成させようとすることを諦めてしまったのだろうか。
そう思ってしまうときっと、オレは自分を負け犬だと認めてしまうことになるだろう。
本当に才能のある奴、ってのには運命だの神だのがついている必要なんてない。
誰かに頼らず、己の力のみで目的だの夢だのを達成できて、初めて人は一人前なのである。
今までオレを追い越してゴールまでたどり着いたにくたらしい奴らがその証拠だ。
次の四月を以て、めでたく「美大生」を名乗ることを許される勝者。
奴らの背中が、今年もオレを置いていった。
『まぁ、そうなんじゃないかと思ったわよ』
電話で報告を受けた母親の第一声は素っ気ないものだった。
日頃のオレの様子は見て知っている。
やっぱり、期待なんてされていなかったのだ。
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