【第二話】 リア充こわい

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「それがつい先日……ちょうど100年前の話でございます」 「ひゃ、100年とか先日じゃないでしょ! 10日前みたいな感覚で言わないでよ!」 「アポロン様がお亡くなりになって、それからずっと私たち姉妹は毎日泣き明かしておりました」 「いや、そんなアホな死に方で100年嘆き悲しむってどんだけなの」 「私たち姉妹とアポロン様には、1つの約束があったのでございます」  生前のアポロンは、数々の女たちや女神たちと浮名を流すプレイボーイであった。  神、妖精、時には人間や動物みたいなのにまで手を出し、きゃっきゃウフフのうっふんあっはんな日々を送っていた。  そして、美女とみれば誰彼かまわず手を出すアポロンの好色の目は、当然自らが主宰するミューズの9姉妹にも向けられていた。  未成年のパンツに顔を突っ込んでも怒られないパラダイス。  やはり……ここには変態リア充野郎のハーレムが存在していたのだ。 「あの日燃え盛る炎の中から、アポロン様はおっしゃいました。生まれ変わったら必ず、われら姉妹の中から1人……生涯最後の妻をお選びになると」 「つ、妻ぁ?」 「ええ。そうしたらもう、決して浮気もしないと約束なさいました」  カリオペーがそう言って涙を拭った。  今までの下りで泣けるってどんなだよ……。  聞く限り、アポロンはとんでもないクズヤローだ。  結婚したら奥さんが泣くのが非リア充のオレでも分かる。  そんなにイケメンがいいのかよ、アホか。  オレはもう、ツッコミを入れる気力がなくなっていた。  だがとにかく、みんな必死でアポロンを生き返らそうとしたのだ。  そしてそれはもう大変だったのだとカリオペーは言った。 「学芸の神・アポロンの席は空席になってはなりません。ですから、すぐに医術の神・アスクレーピウス様が治療に当たられたのでございます」  アスクレーピウスはアポロンが若いころに作った子供らしい。  職業は人間のお医者さんの監視と守護、それから神様専門のお医者さん。  その医術は極めて高度で、死んだ者も生き返らせることができるスーパードクターだという。  アスクレーピウスは、消し炭になったアポロンの肉体を100年かけて復活させた。 それがこのオレ。  どうやらそういう話のようだった。
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