【第三話】オレと、オレ

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「な、何だ?」  棺の蓋は中からガバッ、と開いた。  そして、真っ白な服を着た「オレ」が起き上がった。  キャーッという悲鳴が響き渡る。  弔問客は大パニックになり、読経中だった住職は腰を抜かしていた。  葬儀場は大さわぎになる中、「オレ」はオレらしからぬ大声で騒ぎ始めた。 『何だこの煙臭い部屋は! そして何だこの粗末な服は!!』 『て、哲学!? アンタ……!』 『テツガク? 無礼者めが!! 私は偉大なる神・アポロンだぞ!!』  頭に三角の白いやつをつけ、仁王立ちして訳の分からない事を叫ぶ「オレ」。  逃げ惑う人々。  滅茶苦茶になる祭壇。  両親は息子が生き返ったと泣いて喜んでいるようだった。  だが、オレはやめてくれと叫びたかった。  無礼者、オレは神だと叫ぶアイツは件の神……アポロンに間違いなかった。 『哲学! とにかく病院に行こう! 早く検査してもらわないと!』 『触るな、汚らわしい! 私は男は好かんのだ!!』 『な、何だお前は父親に向かって!!』 『何が父親だ! 私の父は偉大なる神・ゼウスだ! 貴様のようなハゲチャビン親父とは似ても似つかぬわ!!』 『何だとこのバカ息子!』 『やめて! お父さん、やめてって!!』  祭壇上で大暴れする、オレ。  焼いてしまうからいいと思ったのか、死に装束の下はいい加減だった。  ジタバタした拍子にはだけた下半身からサムシングがポロリした。
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