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『離せ! この無礼者!』
『無礼はお前だバカ息子! っていうか母さんなんでパンツをはかさなかったんだ!』
『だって……! だって……!』
『オレのでいいから早く持ってこい!』
『ええい、離せ! 離さんかハゲ親父!』
『実の父親をハゲハゲ言うな! っていうか前を隠せーーー!』
取っ組み合いをするハゲ親父と死に装束の息子、とモザイクをかけたいアレ。
いや、どこぞの愚民とギリシャ神話の神様か。
だがそんな事はどうでもよかった。
問題なのはあのはたから見たらDQNにしか見えない男の体がオレのだという事だ。
しかも、アレは酷い。
ゴミ捨て場で失禁より数倍酷い。
式場からはもう、女性はほとんど逃げ出していた。
「何なんだよあれ!! アイツだろ、お前らが言ってるのって!!」
「そ、そのようですわね」
「あああああ!!! 頼むよ! 戻る方法教えてくれ! あのまんまじゃオレ、ただのイタイ奴……!」
「残念ながら、戻ることは不可能です」
唐突に会話に入ってきたのはあのアスクレーピウスという男だった。
彼は学芸の神・アポロンを生き返らせる「治療」を行った者。
しかし、アスクレーピウスの医術を以てしても、一度生きた人間の体に入ってしまった魂を元に戻すのは不可能という事だった。
彼はようやく、何が起きたのかを全て把握したらしい。
親戚の男たちに布団で簀巻きにされどこぞへ運び出されていくオレを見て、深いため息をついた。
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