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「素晴らしいですわ、アポロン様。このエウテルペー、感動してしまいました」
「え、あれで?」
予想外の反応にオレの方がびっくりだった。
どうやら、エウテルペーは「抒情詩」つまり人の感情を詠った詩や歌を司る神様らしい。
しかし、あんなすっとこどっこいなデタラメソングに泣くとは。
オレから見ればその涙腺のゆるさがむしろ神レベルである。
「これで下界にまた歴史に残る名曲が誕生しましたわ。いつもながら、素晴らしいお仕事です」
「え?」
「ああ、記憶を無くされてるのでしたわね。アポロン様の歌われた歌は、下界の音楽家たちのもとに降り、そして人間の世界にもたらされるのです」
「はぁあ!? 何それ!」
つまり、いわゆる「降りてきた」ってやつなんだろうか。
とするとオレは今、とんでもない駄作を世にもたらしてしまった事になる。
これはもう、取り返しのつかない大参事だ。
「ヤバいよヤバいよそれ! 何とか回収できないの!?」
「そのような必要はありませんわ。今きっと、どこかの音楽家やミュージシャンがさっそく楽譜に書き起こしてミリオンセラーを売り出す準備をしています」
「ミリオンかよ!」
「私の歌ではハーフミリオン(50万)が精いっぱい。ですが、アポロン様のお作であれば100万越えの大ヒット間違いはありません」
「うぁあああ! やめてぇえええ!」
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