プロローグ

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「馬室さん、親どうでした?」 「別に、なんも」 「いいっすね、オレ親泣いてたんすよ」  北風の中を歩きだした2人はどっちもオレより若い。  予備校に通ううちに仲良くなり、いつの間にか「先輩、先輩」とついてくるようになってしまった。  バカが固まってつるむのはつまらないと思う。  でも、1人になるよりはマシだ。 「何で1浪くらいで泣くんだよ」 「さぁ……期待してたんじゃないすか?」 「お前、頭いいもんな」 「そんな事ないっすよ」  親に泣かれたというこの1浪決定の18歳は、オレが知る限りかなりの秀才だ。  噂では、頑張れば東大や京大くらい狙えたんじゃないかとも言われていたらしい。  だが、本人はどうしても芸術の道で食っていきたくて美大を受験してしまった。  もう一人の2浪の20歳もそこそこ頭がよく、同じく別の道でならもっとすんなり大学生に慣れていたクチだ。  この手の奴らは意外に多い。  そして、往々にして頭は良いのにそっちの才能はない、というカナシイ現実にぶち当たる。
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