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「アポロン様、いかがでした?」
「う、うん、いいと思うよ。とてもクールで……」
「まぁ! 『祝福』いただけますのね!」
「え?」
「アポロン様のお褒めの言葉はいかなる場合でも私たちの芸術への祝福となりますの。これで、世の中にまた新しい伝説のバンドが生まれますわ!」
どうやら、エラトーが作っていたのはこれから世に出るまだ無名のバンドの曲らしい。
食うや食わずで何とか音楽をやっている彼らの才能に目を付けたエラトーは、自ら曲を作って応援してやることにしたのだ。
それをオレが褒めた(?)事で効果が倍増。
エラトー曰く、これもまたミリオン間違いなし。
何だか簡単すぎて、オレは目を白黒させてしまった。
「バンドが世に出るって、めちゃめちゃ大変なんだぞ? オレ達の仕事こんなにテキトーでいいのかな……」
「それでよろしいのですわ、アポロン様。世の人間たちが苦労するのは、私たちに見つけてもらうためですもの」
「そうなの?」
「ええ。神々がほほ笑むのは、相応の才能や努力を認めることができる者たちにのみです。私たちの役目は、そうやって一握りの宝石を見つけだす事なのですから」
エラトーの言葉は、何だかオレの心にストンと落ちてきた。
世の中にはそれこそ腐るほど夢や目標を持った人間がいる。
その中で成功できるのはほんのわずか。
神も「これは!」と思う人間を担当する分野から1人で見つけなければならないのだから、そうやって選ばれるのは必然的に「すごい奴」か「超すごい奴」になるわけだ。
だとすると、人間だったオレが何年も浪人を繰り返した理由も何となく分かってきた。
闇雲にやってきたあの数年間。
オレは神に見つけてもらえるような人間にはなれなかったわけだ。
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