1人が本棚に入れています
本棚に追加
「はぁ……そう言われればそうだよな」
屋敷に戻ったオレは、壁中にびっしり飾られた絵画の前でため息をついた。
本気で芸術の道を進みたいなら、ダ・ヴィンチや写楽やゴッホや、あらゆる天才と肩を並べるくらいの技術やら、少なくともそのうちそうなってやる自信とか気合がないとダメだ。
それがオレにあったろうか。
ただただ「オレはやれるんだ!」と意地を張るばかりで、自分を客観的にみられないまま無駄な日々を過ごしたんじゃないだろうか。
そう考えると、気分が落ち込んできた。
「……アポロン様が、悲しい気を帯びてる」
ぼそぼそとした声がして振り返ると、そこには紙の束を抱えて無表情で立っている少女がいた。
明るくきゃっきゃした感じの他の姉妹とは明らかに異質な雰囲気。
彼女はオレの傍に寄ってくると、隣に立ってオレの顔をじっと見た。
「私の、お仕事なの」
最初のコメントを投稿しよう!