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「馬室さん、居酒屋もう開いてっかな?」
「開いてるわけねえだろ。まず昼飯食いに行こうぜ」
「駅前にラーメン屋あったかな」
オレ達は当てもなく街へ繰り出した。
当然ながらこんな日はまっすぐ帰る気などしない。
ラーメン食って、ゲーセン行って、居酒屋が開く時間になったらまたのそのそと移動し始める。
でも、何をしても頭に浮かんでくるのは「今年も落ちた」という真っ直ぐ見たくない現実ばかり。
多分、オレだけじゃない。
一緒に来た2人もそうだ。
「予備校の先生に結果連絡しろって言われましたよね」
「いいよ。明日言えば」
「馬室さん来年、どうすんすか?」
「……来たよ、オレが今一番要らない質問」
「あ、すいません」
「受けるわけねえだろ。オレ、もう成人式来ちゃったし」
正直言って具体的なプランはない。
去年予備校を「卒業」したある先輩は今、トラック運転手をしているらしい。
今いる居酒屋と同じチェーンで店長になった人もいる。
みんな、いつかは花咲かせたくて頑張り続けていた人たちだ。
でも今はそんな事をすっぱり忘れ、全然違う道を歩んでいる。
多分そうだ。
そうだと言っていたから。
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