プロローグ

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「馬室さん、もしそうするなら一緒にシェアハウスしませんか?」 「何? お前も今年でやめんの」 「専門行こうかと思って。何も、4年制大学じゃなくてもやりたいことはできるし」  そんな事を言い出した20歳はいくらか現実的だった。  金さえ払えば、アート系の予備校は就職まで面倒を見てくれるらしい。  だがその代わり国立の美大とは比較にならないくらいの金額を求められるようだ。 奴がそれを気にする様子がないところを見ると、何とかなるアテがあるのだろう。  いいよな、おぼっちゃまは。  オレは多分、これから先は親に学費も家賃も出して貰えない。 「お待たせしました。ファジーネーブル、カシスウーロン、それからノンアルコールのピーチミルクでございます」 「お、来た来た」 「じゃ、とりあえずオツカレ」 「オツカレっす!」  酒でうっぷんを晴らすとは親父臭い。  でも、飲まずにはいられなかった。  何でオレじゃなくてあいつらが受かったんだ。  オレの何が悪かったんだ。
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