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縁在りて無し
見渡す限りに広がるのは、大雑把に高さの揃えられた白く四角い民家の屋根。
その上を真に勝手ながら飛び渡り伝い歩き、適当に街中を進んでいくと、一際怪しげな建物を発見した。
「なんだ? このうさんくせぇ建物……」
屋上から土埃舞う剥き出しの地面へと降り立ち、黒マントと後ろで結わえた黒髪を揺らしつつその家屋を見上げる。
家屋というよりは……教会?
周囲の白石で作られた民家と似たような形状なのだが、その扉、壁面の細部に至るまで施された精緻な装飾は、他では見たことがない。
「いや待てよ……この文様は、結界か?」
一つ思い当たった記憶。
どこぞの本で見た【孤独を愛する引きこもりの結界】とやらに似ている。
確かこの結界は、【結界を張った場所に行こう】と【意識すればするほど】に【認識不可能になる】という性質があるはず。
つまり、【行きたい人】ほど【辿り着けない】という非常に面倒な仕様である。
仮に自宅にこの結界を張ったとして、影響を排除する固有鍵を失くしたらどうすんだ。
二度と帰れないか、自分以外の誰かに先導してもらって適当に歩いてもらい、そのうち着くことを願うことになるのか?
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