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しかしそんな面倒な結界を張ってるってことは、この中に【そうまでして隠したい何か】があるってことだよな。
「中に何を隠してやがんだ? 面白そうだな」
暇潰し発見。
俺は意気揚々と、重苦しい両開きのドアを引き開ける。
内部は――
「な、んだこれ……?」
――外観の数倍、広かった。
どんな魔法を使ってやがる?
外見は二階建てのそこらの民家と変わらねぇのに、中身は大きな館のエントランスみたいにだだっ広い。
見上げれば吹き抜けの時計塔並に縦長で、おまけに天井には丸く嵌め込まれたガラスの天窓までついており、そこからは今日は曇りだってのに白く眩い陽光が降り注いでいた。
明らかに、奥行きも横幅も縦幅も、外観を数倍以上超えてるぞ。
全体的に薄く透明な青で彩られた壁面には、二階部分より上の全てにびっしりと本棚が並んでいて、そこに隙間なく本が詰めこまれている。
一番目を惹かれるのは、その中央。
空間の真中心とも言うべき空中に、一人の少女を乗せた円板が浮いていた。
でも――そこに辿り着くための階段は、一つもない。
少女が纏う深緑と純白のローブが、気流に揺れているだけ。
「いらっさいませー。おっ客さん初めてだねー。ちとこっちまでおいでやすー」
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