縁在りて無し

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 妙に軽やかで弾むような声に視線を下げれば、白黒のチェス盤みたいな床の先にバーカウンターっぽい一角があって、その中に佇むいかにも怪しげな奴がいた。  深い青のローブに頭まですっぽり覆っていて顔は分からないが、声質は女っぽかったような。 「おーい。おっ客さんやーい。聞っこえってるー?」 「あ、ああ……」  幻想的な場にそぐわぬ間の抜けた声。  その落差に複雑な想いを抱きながらも、白黒の四角が並んだ床に足を乗せ、とりあえず進むことにした。  左右対称の屋内。  両サイドの壁際には涼し気な音を響かせる水流があり、それに隣接した植え込みには鮮やかな緑を放つ植物が並ぶ。  その水流を辿れば……なんと水源は、目線より高く宙に浮かぶ【水晶球】だった。 「……どうなってやがる?」  なんか、興味本位で異次元にでも迷い込んじまったか?  頭上の少女は、奇妙な魔術光に囲まれて何やらお取り込み中だし。  不意に後ろで、勝手に扉が閉まった。  それを振り返り、ちょっと帰れないかも知れないな、とか悲観的な想像をしてしまう。  でもまぁここまで来たからには前に進めば何か良いことあるだろ、と一秒で楽観して、バーカウンターまで辿り着く。  腰は高いが背もたれの低い椅子に腰掛けてカウンターテーブルに肘を付き、目前の深青ローブに包まれた顔を覗き込みながら話しかけてみる。 「で、ここはなんだ?」     
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