6人が本棚に入れています
本棚に追加
妙に軽やかで弾むような声に視線を下げれば、白黒のチェス盤みたいな床の先にバーカウンターっぽい一角があって、その中に佇むいかにも怪しげな奴がいた。
深い青のローブに頭まですっぽり覆っていて顔は分からないが、声質は女っぽかったような。
「おーい。おっ客さんやーい。聞っこえってるー?」
「あ、ああ……」
幻想的な場にそぐわぬ間の抜けた声。
その落差に複雑な想いを抱きながらも、白黒の四角が並んだ床に足を乗せ、とりあえず進むことにした。
左右対称の屋内。
両サイドの壁際には涼し気な音を響かせる水流があり、それに隣接した植え込みには鮮やかな緑を放つ植物が並ぶ。
その水流を辿れば……なんと水源は、目線より高く宙に浮かぶ【水晶球】だった。
「……どうなってやがる?」
なんか、興味本位で異次元にでも迷い込んじまったか?
頭上の少女は、奇妙な魔術光に囲まれて何やらお取り込み中だし。
不意に後ろで、勝手に扉が閉まった。
それを振り返り、ちょっと帰れないかも知れないな、とか悲観的な想像をしてしまう。
でもまぁここまで来たからには前に進めば何か良いことあるだろ、と一秒で楽観して、バーカウンターまで辿り着く。
腰は高いが背もたれの低い椅子に腰掛けてカウンターテーブルに肘を付き、目前の深青ローブに包まれた顔を覗き込みながら話しかけてみる。
「で、ここはなんだ?」
最初のコメントを投稿しよう!