6人が本棚に入れています
本棚に追加
あちらも同じ速度で動いているのに、何故か少女は微動だにしていない。
その手には、数冊の大きな魔術書が抱かれていた。
すれ違う一瞬目が合って、くすっと笑われてしまう。
そこで、俺は自分の無様な格好に気づく。
おい、何かこっ恥ずかしいぞ。
あんな美人に醜態を晒す羽目になるとは、一生の不覚……。
円い石が止まった。
いつまでもしがみ付いてんのは格好悪いので、最初の急上昇ですっかり震えてしまった足をしばいて立ち上がる。
「さぁ、お次はどうなるんだよ?」
半ばやけくそ気味に周りを見渡せば、先ほど金髪少女を囲んでいたのと同じ色彩の魔術光――淡い青と黄緑の術式が発動して、空中で踊りながら魔法文字を描いていく。
水が走り、風が編まれるように。
やがて完成した光の空間多重魔法陣は、全方位を取り囲む壁面に備え付けられた本棚へと無数の手を伸ばすように光線を引っ掛けて――
「ついに……ついに俺の手に、魔導書が!?」
来い……来い!
俺と縁在りし魔導書よ!
早くこの手に!
さぁ、共にこの国で駆け上がろうぜ!
まだ見ぬオマエを使って、今まで見下してきた奴らを見返すんだ!
おっしゃ、俄然やる気出てきたぞ!
なんだって、やってやらぁぁぁぁぁっぁあああああああああ!!
最初のコメントを投稿しよう!