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夏祭りは盛況だった。 よく知った顔の人がたくさんいた。 院長先生がマイクを持ち後カラオケを披露した。 主治医の先生は焼きそばを焼いていた。 ぼんぼりがたくさんつるされ、近所の人が盆踊りを楽しんでいた。 祭りの音、人々の顔、何もかもが華やかだった。 「いいわね。みんな楽しそう」 浴衣姿に団扇をそよがせ君も楽しそうだった。 「生きるってこういうことなのね。今まで何かを忘れてたみたい」 しみじみと言った。 そうだよ。小夜子。君は今この時を生きているんだよ。 生きているだけでずばらしいことじゃないか。 祭りの灯りは夜遅くまで灯っていた。
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