11/16
前へ
/56ページ
次へ
家族がたまらずナースコールを押す。 もう何十回と押している。 看護師はその要件を知っている。来る看護師、来る看護師みんな怯えていた。 「この苦しんでいるの、何とかしてください」 鎮静剤(セレネース)を打つしかないのだが、もう体の中に打つとこはないのだ。 腕から足まで打って打って打ちまくった。もう彼女は人ではなかった。。。可哀そうだった。 看護師も一生懸命場所を探す。 ようやく決まったのは手の甲だった。 そこに太い針を刺した。 君はそれでも激痛のために手をびくっとさせ、しかし容赦なく薬は注入される。 可愛そうに。なぜ。なんのために。 みんな泣いていた。みんな君をさすってやった。 いとおしそうに。 僕は一人椅子に座って顔を覆い君にぶつぶつと謝った。 薬は意識の低下という重い代償を払い、一時平穏をもたらしてくれた。 その間みんなも休む。みんな疲れていた。
/56ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加