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ここは大学のとある廃れた研究室、今日も今日とてくっさぁーい薬品と、煤だらけの土器と、引き戸の隙間から漏れ出てきた光をギラギラ反射させて薄暗い部屋を照らす黒曜石が僕を待っていた。
悲しいかな、僕を含めてここに来る同期は数少ない、誰も好き好んでここには来たくないだろう。
なぜならここは、大学の中でも特に面倒くさくて臭い場所にあるからだ。
さて本日僕は片手に他県の発掘報告書多数をかつぎ、空いた手で薄汚れたドアノブを回して手前に引く。
するとだ、部屋の奥で何かが落ちてきた音が聞こえてきた。
「またか」
様々な都合上重くなっているドアを半分ほど開き、音の発生源である部屋の奥へ。
この部屋というか研究室は普段は授業等で使う実習室が約七割、残りの約三割がゼミ生やその下っぱである二年生が使う作業場となっている。
その作業場は複数の各机に研究資料やら報告書やらが整理整頓とは程遠い横積みでかさなり、ギリギリ落ちるか落ちないかの瀬戸際にパソコンやら印刷機が無理矢理設置されている。
それらは何度か落ちた形跡があり、画面にひび、角は一部欠けたのだろう補修材がまだ新しく練り込まれていた。
それで、さっきの音はと言うと。
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